『カチカチカチッコチッ…』
また轟くんの右足元から氷が広がる。
(早いっ!)
側転、バク転と繰り返し、退避するが轟くんは一瞬の隙も与えてくれない。
(轟くんは遠距離からの攻撃だから、えっと、近づくには、ま)
氷が迫ってくるのが止まったかと思うと、次は轟くん自身が飛び込んでくる。
『カチコチンッ』
殴られそうになるのを間一髪で体を逸らす。
が、轟くんが殴ろうとした手元から氷が地面から突き出ていた。
また私が考えるうちに、轟くんは次の攻撃を仕掛けてくる。
私は後ろへと大きく飛び下がると、木の幹に足をつけ、思いっきり蹴り出す。
宙に浮いたまま、顔を目掛けて蹴りを入れる。
焦る顔1つ見せずに、私の蹴りを右腕でガードする轟くんが静かに零す。
(よまれてる!)
『カチカチカチッ…』
轟くんは私が着地するであろう地に、氷を大きく張る。
(やられた!)
私はトンッと後ろに逃げるが、氷に足が滑り、手をつく。
その瞬間、手が氷に固められ、身動きが取れなくなった。
いや、厳密には動ける。
" 手袋を取れば "、の話だが。
けど、
轟くんが私の体、足を氷で動けないようにしなかった理由、
手袋を外せばまだ続行できる状態にした理由がここにあった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。