あなたが顔を上げるのも待てず、思いっきり抱きしめる。
納めきれなかった。
溢れ続ける何かを、堪える事は出来なかった。
あなたの夢の中なら、俺はきっと許されるだろう、と、
気がするという先程の感じ方は願望に近い確信と化してしまった。
あなたの顔は見えない。
どんな表情を、気持ちをしているのか完全に見えない。
でも、今朝の眠る姿が浮かんだ途端、この言葉が口から出ていた。
唐突すぎて驚く。
ホロホロと温かいものが零れては俺の肩へと落ちていく。
それに気づいた俺は意識せずともより一層、抱きしめる力を込めてしまう。
嗚咽を必死で我慢しながら、話し続けるあなた。
ふと、脳裏に寝室で1人で泣いていた時を思い出す。
誰にも頼らず、1人で孤独に泣いていたあなたを。
(…)
あなたに何があったのかは知らない。
俺達に隠し続ける何かがある事は、勿論分かっていた。
個性の事、
慣れた戦闘術、
血の付いた後のある軍手、
衰弱している身体、
青く変色した瞳。
他にも謎が多い。
俺はその言葉を聞いて、そっと手を離す。
あなたはもう一度、「ありがとう」と言った。
あなたの白く細く、そして少し冷たい手が俺の両頬を包む。
それから、あなたは俯く。
(震えてんのかよ…)
微かな震えが頬に響く。
その言葉を聞いた俺がどんな気持ちなのかも知らぬまま、あなたは「へへっ」と笑う。
あなたは今まで見たことの無い様な笑顔を見せた。
本当に…
綺麗だった。
(…っ、)
あなたの両頬に触れていた両手を下ろさせる。
何も言わせない。
俺はあなたが目を閉じる前に、自分の手で目元を覆う。
最後まで抵抗しないあなたに、
俺は、
唇を落とさずには居られなかった。
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こんにちは、さくらどろっぷ.です🌸
いよいよ、この作品も最終章に突入します!
ヴィラン・ジッパーは勿論、ヘロインから伸びる魔の手から、
今まで必死に戦い、立ち向かってきた木奥あなたさんの長いこれまでの軌跡(200話)もとうとうクライマックスです。
木奥さんがその先に何を見たのか、
そして彼女に降り掛かる最悪、待ち受けるものとは一体何なのか。
詳細等は『the moon blooms .』に目を通して下されば幸いです👀💭
(👆『the moon blooms .』…お知らせや雑談等のお部屋を始めてみました! 是非、其方の方もよろしくお願いします!)
乞うご期待下さい!🙋🏻♀️🌷
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!