第230話

個性強制増幅剤の末路
9,277
2020/02/05 17:00
ヘロイン
…ドウ、デモ、イイ。コレ、サエ、ウテ、バ、カンケイ、ナイ…
ヘロインは見覚えのある注射器を取り出す。

長い針の先が恐ろしい程に鋭く、中の液体がチャプンッと小さく音をさせている。
あなた

個性、強制増幅、剤…

ヘロイン
コレ、ヲ、ウテ、バ、オマエ、ハ、モウ、ウゴケ、ナイ。タエキレ、ズ、シヌ、カモ、ナ。
あなた

打てる、もの、なら打って、みな、よ…

ヘロインが私に手を伸ばしたまま、静止状態になる。

私はその奇妙さに目が自然と丸く見開いてしまう。






私は気づかなかった。




『グサッ』
ヘロイン
モウ、ウッタ。
あなた

自分の肩口がズキンッと痛んで、咄嗟に押さえる。
あなた

…っくはっ…

『ボタボタボタボタッ…』

何が起きたのか分からないまま倒れ込む。



『バサッ』


瞳が痙攣するように焦点が定まらず、
そのままうつ伏せで目を開いているのがやっとだった。
ヘロイン
オマエ、ニ、チカヅク、ノ、ハ、キケン、ダカラ、ナ…
(ま、さか…投げて来る、なん、て…)


肩口に刺さった注射器を抜く事さえも出来ず、長い針が肩を貫通する程深く刺さっているのが分かる。


(ち、からが…)
あなた

へ、ロイ、…!


(呂、律が…回ら、な、い…)
あなた

ぐっ、はっ…ポタッポタポタッ…

唾液と混じった血が、口から糸を引いて吐き出される。

身体が熱い。

痛い。

傷ついた皮膚、目、鼻、口、耳…

体の内側がそこから飛び出してきそうなぐらい、熱くて、痛くて、気持ち悪い。
あなた

っ、…

目は怖くて閉じられない。

瞼の裏まで熱くて、眼球が焼け死にそうだ。
あなた

はっ…はっ…はっ…

呼吸も上手く出来ない。

外気が喉を通るだけで、喉が内側でブチブチと切れている気がする。


血の匂いが口の奥からするのが分かる。
ヘロイン
カワイソウ、ナ、ヤツ、ダナ。オマエ、ハ、コンナ、ニモ、クルシンデ、イル、ノニ、
あなた

…っ、、、

ヘロイン
ダレ、モ、タスケ、ニ、キテ、ハ、クレナイ、ンダナ。
その言葉に私はつい笑い声を漏らしてしまった。
あなた

ふっ、ふふっ、…

ヘロイン
ナニ、ガ、オカシイ、?
あなた

い、いや、何も、可笑、しくない…よ?

でも、ね、…


(只、私がジッパーの研究室に居た頃と変わってないなって、思っただけ。)




そう、変わってない。

私は誰にも助けては貰えなかった。

親は死に、ヒーローは来ず、ましてやジッパーに加担する政府の人間やヒーローだっている。

誰にも頼れず、そして、「助けて」の言葉さえ口から出なくなってしまった。




でも、今は…
あなた

違う、の。

違う。



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