第147話

君が個性を使わない理由
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2019/06/24 15:23
恐ろしいスピードに身を任せ、轟くんが伸ばした右手をギリギリの所でかわそうとする。

が、交わせず、思わず生身の手で触れてしまった。



『バチンッ』
あなた

っ!!!!

デクくんの時と同じ、頭をかち割られる様な痛みが突き抜ける。

幼き少年、

その少年の母親らしき女性、

そして見た事のあるプロヒーローの姿。

それから、

他の子供達を横目に見ながら、
稽古場の様な場所で嘔吐を繰り返す少年、

病んでいく様な母親らしき女性、

冷たい目をしたプロヒーロー、

熱湯、

赤い火傷の痕…私の頭を一瞬でめぐり巡る。








『ドンッ!』

いきなり肩から押されると、すぐさま離れたのは轟くんだった。
轟 焦凍
お前……、
片手を頭に押さえつけ、下を向く轟くんの言葉には何か尖っている気がした。
轟 焦凍
一体俺に何し
あなた

お母…さん

気づけば、口にしたくないはずの単語が漏れていた。
轟 焦凍
…?!
轟くんの驚いた顔を見てから、ハッと我に返る。

ボタボタと私の頬を伝う涙を知ったのも、その後だった。


どうして君が個性を使わないのか、分かった気がした。

ずっと気になっていて、見てみたい、という好奇心がどこかにあった。

それを使う事を轟くんがどう考えてるなんて、深く考えていなかった。
轟 焦凍
…木奥、お前の個性って
轟くんは鋭い。

普通、自分の記憶を覗かれて気づく人間はなかなか少ないのに。


(ばれちゃったかな…)
あなた

ごめんね、勝手に見

『BOOOOOM!』



突然の爆風に私の体は吹き飛ばされそうになる。
あなた

かっちゃん?!

轟 焦凍
爆豪か。
爆豪 勝己
おい、半分野郎。
声がする方を見ると、少し下の氷柱に立つ勝己の姿があった。
爆豪 勝己
その前髪野郎の相手、代われや。

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