『ズザザザザサッ……』
座り込むデクくんの上に、私が乗っていた。
背中と膝の裏に手を回し、私の顔を覗き込む。
デクくんの顔に沢山の汚れがついている。
どうやら私が落ちるのを見て、受けとめようと、必死に走って来てくれたらしい。
デクくんが私の体に回す手に少し力を入れる。
急に身体が熱くなり、体温が上昇してるのが分かる。
アドレナリンとパニックで痛みなんて、どこかに消えてしまいそうだ。
走っていくお茶子さんの姿が見えなくなって、再度デクくんは私の顔を覗き込む。
フイッと向こうを向いて、右頬を人差し指でかきながら、フードを被る。
恥ずかしいのと、
こんな時にドキドキしてるのがバレるのが嫌なのと、
青い瞳のことがあってフードに手を掛ける。
その瞬間、デクくんが私の顔を両手で挟み、デクくんの前へと向かせる。
慌てて瞼を閉じた私の顔を見て、額から血が出てるのに気づく。
(最悪だ…)
デクくんの私を呼ぶ声から真剣に心配しているのが伝わる。
私は目を開かずには居られなかった。
震えながら、ゆっくり目を開ける。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。