あなたの謹慎が解けると聞いて、ババアにも連絡すると、迎えに行けと言われた。
ついでにあなたを連れて服とか揃えたい物を買ってこいとか、このキッチン用具が欲しいとか言われ、幾らか金を渡された。
(登校時間には流石に起きてんだろ…)
そう思いながら休日の学校に出向き、あらかじめ教えて貰っていた部屋の前に立つ。
『コンコン』
ノックをするが中から返事はない。
『…』
それどころか物音ひとつしていないようだ。
扉が開いている気がして、レバーを回してみる。
『ガッチャッ』
(開いてんじゃねぇか…鍵ぐらい閉めろよ…)
そのまま入っていくのもな、と思い、「あなた、」と呼んでみるが返事は無い。
ズボンのポケットに手を突っ込みながら、部屋に入り、ドアを閉める。
キッチンにもシャワー室にも居ないようなので寝室へと進んでいくと、
ベッドの上でスヤスヤと眠るあなたの姿があった。
小さく丸くなって眠る姿を見て、ただでさえ背丈も低いのに更に小さく感じた。
傍には青いバッグと俺が届けるはずだったコスチュームが置いてあった。
それを目に入れた瞬間、急にイラッとしてしまった。
(半分野郎か…アイツ、何考えてんだ…?誰かを気にかける様なキャラじゃねぇだろーが。)
(…何か作るか。)
一度キッチンに行き、色々と物色しているとオールマイトが届けてくれたのか、食材が幾つかあった。
女が使いそうなメモに
『木奥少女へ。謹慎解けると聞いたよ。これからも頑張ってくれ!オールマイト』
と自筆であり、食パンの袋に貼ってあるのを見て、少し驚く。
(食パンに卵…蜂蜜…バットもあんのか。)
調理台の上に食材や調理器具を粗方並べると、腕まくりをして手を洗い、調理に取り掛かった。
食パンを卵や牛乳等を混ぜたものに浸して、冷蔵庫にしまうと、俺はあなたを起こす為に寝室に向かおうとした。
途中でテーブルの上のある物に気づく。
それはあなたがいつも付けている手袋だった。
ふと手に取って裏側を見る。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!