それを聞いた理由は他でもなかった。
彼女が昨日話した事。
それは俺にとっても、ここ(雄英)にとっても、いい話じゃなかった。
ーーー昨日
切島や緑谷達を帰らせた後、俺とリカバリーガールの前で彼女が切り出す。
リカバリーガールが彼女に真剣な眼差しで聞き始める。
だが、俺は別にそうでもなかった。
次の言葉を聞くまでは。
ジッパー。
何年か前に起きた恐ろしい実験を繰り返し続けたという、犯罪科学者。
犠牲者はかなりの数に上り、死者もいるなかで、解放された者は全員個性をボロボロにされていたという。
捕まったものの、すぐに脱獄。
未だに捕まっていなかった。
(腕の傷…?)
その目を察したかのように、彼女は裾を少しまくる。
そこにはギザギザと雑な傷跡があった。
彼女は黙った。
少しして口が開く。
が、肩から下げていた小さなバッグから、USBを取り出す。
少し傷の付いているUSBを俺は受け取る。
彼女は視線を落とした。
俺は納得しながら、次の言葉を待つ。
(なるほど、警察で保護してもらうよりも、雄英の方がセキュリティが安全って訳か。)
だが、結論は彼女とは違う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。