第33話

『頑張れ』
21,655
2018/08/15 13:15
硬いアスファルトの上を転がるが、即座に体勢を立て直し、次の攻撃に備える。

しかし、体力はもう底をつきかけていた。
がくんっと落ちていくような感覚が手足を襲いかける。

けど、どう見ても爆豪くんの攻撃が止む様子は無い。

下を見つめていた時だった。
緑谷 出久
木奥さん!
あなた

緑谷…くん?

遠くの方で緑色のもじゃもじゃの髪をした男の子が微かに目に入る。

拘束を解いた緑谷くんが駆けつけてくれたらしいが、脱落者となってしまった今は一緒には戦えない。
緑谷 出久
諦めちゃ駄目だ!
爆豪 勝己
あぁ、何だデク!
あなた

そ、うだね、頑張らなきゃっ、

私の中で初めて嬉しいと思う言葉を貰えた。
嬉しくない『頑張れ』ばかり貰っていた私には、特別に聞こえた。



※回想
ジッパー
どうだい、新しい薬は?
身体が痺れるかい?キリキリ痛むかい?体が重いかい?幻覚が見えるかい?幻聴はどこまで聞こえるんだい?目は見えてるかい?

…ほら、あなた、笑ってよ。今日も訓練、頑張ってね。(ニコッ)
あなた

…は、い。




(そうだよ、今は…少しぐらい羽目を外そう。)

私は目を閉じる。
そして、ふっと体の力を抜く。

あぁ、今だけは、今だけは…

どうか…、

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