私はいつも通り、淡々と適当にそれらしい事を、右頬を人差し指で掻きながら述べていく。
その瞬間、私の視界は天井を向いていた。
身体が『ドンッ』とまた叩きつけられた。
節々が軋むように痛い。
私の両手首を掴んだ轟くんは、私の上に乗るような感じで私の身体を跨いでいた。
何が起こったのか、理解するのが遅れた。
私の身体は床へと押し倒され、真上に居る轟くんの目は前髪で隠れて、どんな目をしているか分からない。
分からない状態の中で、轟くんが口を開いた。
身体を強く揺すぶられる。
轟くんの口調が強くなって、怖くなった。
ただ、目の前の轟くんを怖いと感じてしまう。
『ビクッ』
大きな声が部屋中に響き渡る。
いつも冷静で、静かに話す轟くんから出る大声とは思えないからだろうか。
私の口はぐっと力を入れて閉じなければ、細かく震えてしまいそうだった。
身体が硬直する様に動けなくなっていく中で、やっと、轟くんの顔が見えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!