第238話

緑谷 出久side
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2020/02/21 17:00

(轟くんも、あなたさんの事…)
緑谷 出久
僕と…同じだ…
爆豪 勝己
っ、…!
『ガタンッ、!』
緑谷 出久
?!
爆豪 勝己
おい、クソナード…
緑谷 出久
爆豪 勝己
何で俺が知らなくて、てめぇと半分野郎が知ってんだ!!!!
ゆっくり立ち上がったかっちゃんの目は血走っていて、僕は振り返るなり青ざめる。

でも、只単に怒っている訳ではなく、苦しそうに表情を歪ませていた。
緑谷 出久
僕だって…なんにも…何にも知らないんだ!君だけじゃない!!
爆豪 勝己
あ"ぁ"?!
切島 鋭児郎
おい、落ち着けって!爆豪!
爆豪 勝己
うるせぇっ!!!
轟 焦凍
…お前には話すなって木奥が言ってた。
爆豪 勝己
轟 焦凍
お前には重荷を背負わせる訳にはいかない、って。
全員
相澤 消太
木奥のやつ、轟にそんな事を話してたのか…。お前らに木奥の事で話してない事がある。木奥の了承は得ているが時間が無い。合理的に行こう。




それから僕達は知った。
砂藤 力道
嘘だろ、木奥の個性って…
常闇 踏陰
反射神経や瞬発力に長けている個性じゃなかったのか…?!
あなたさんの個性が僕らの思っている個性じゃなかった事。
障子 目蔵
個性・メモリー…
あなたさんの個性は『メモリー』というもので、記憶に触れる個性持ちであるという事。


強くなりすぎた個性で僕らを傷つけないように、常に手袋を付けていたこと。
峰田 実
おいおい、待て待て!じゃぁ、あんだけ超人離れして動けてたのって…
瀬呂 範太
ヴィランの研究施設で育って…
葉隠 透
ヴィランから…逃げてた…、?
あなたさんはあるヴィランのせいで事件に巻き込まれ、

幼い頃から研究材料として扱われ、

その施設から必死で逃げてきた事。




そして、
爆豪 勝己
っ…くそっ、
かっちゃんに出会った事で雄英へ来たという事。
尾白 猿尾
…っ、あの時も普通に手合わせて…
耳郎 響香
眼帯してたのも、痩せてたのも、寝不足気味だったのも…
蛙吹 梅雨
私、何も気づけなかったわ…お友達だったのに…
あなたさんの余命が既に残り少なかった事。

個性に身体を蝕まれ、普通に過ごす事自体が限界を超えていたこと。
麗日 お茶子
…あなたちゃんは最初から背負いすぎてたんだ…
青山 優雅
優しい彼女らしいといえば、らしいよね…ほんと。
口田 甲司
…(頷)
あなたさんが覚悟して立ち向かっていたのは、

背景に僕達に迫る危険を回避しようとしていたという事。
相澤 消太
結果、お前らは特に大きな被害も無く、この場に居る。昨夜の事件も建物自体の損傷は激しいのに対し、重傷者は木奥だけ。その場の人間は軽傷か無傷で済んでる。
轟 焦凍
相澤 消太
まぁ、木奥のした事は褒められたものではないがな。
基本、ヒーロー免許を持たない僕らが個性を行使してヒーロー活動をするのは許されない。




ただ、僕は、




(もし僕があなたさんと同じ立場だったら…)







きっと彼女と同じ事をしたと思う。



全員
相澤先生が全て話し終えると、丁度チャイムが鳴った。
相澤 消太
…気持ちは分かるが、切り替えが今は大事な時だ。大丈夫だ、木奥なら目を覚ます。それだけを信じて前に進め。以上。
淡々と言葉を並べた相澤先生は静かに教室を出て行った。
全員


僕達の沈黙は誰かが破ることも、誰かに破られる事も無かった。


ただ、時間がゆっくりと流れ、


僕達の前を過ぎていった。

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