第215話

保険室に
9,243
2019/12/11 15:45
葉隠 透
一旦、保健室でも行く??
あなた

いやいや!いいよ!大丈夫!

『保健室』と聞いて、リカバリーガールの顔が自然と浮かんだ。

只でさえ毎日診てもらってるのに、こんな小さな事でお世話になる訳にはいかない。

それにリカバリーガールを前にすると、無意識にも甘えてしまいそうになる。


謹慎2日目の時もそうだった。

力いっぱい抱きしめられた際、母親の様な優しい温かさを感じた。


どうにも私は、リカバリーガールとお母さんを重ねようとしているらしい。
轟 焦凍
どうした?
あなた

あ…

麗日 お茶子
轟くん!あなたちゃんが鼻血出しちゃって、なかなか止まらなくって…
尾白 猿尾
木奥さんに保健室に行く事を勧めたんだけど、行きたくないって。
あなた

あ、えっと…

轟くんは私の身体の事を知っている。
このフィールドに居る、誰よりも知っている。

私の置かれた身体の状況も、もう既に時間が無いことも。

それを意識すればするほど、私の目は轟くんとは合わせずらくなってしまった。
あなた

行きたくない、っていうか…その…

轟 焦凍
その間も流れ続けているのだろう。
押さえたティッシュがじんわりと赤く染まっていく。
生温い感覚と共に、湿ってゆくティッシュが鼻先の大部分に触れる。


轟くんの視線が明らかに血の滲んだティッシュに向けられているのが分かった。
轟 焦凍
あなた

大丈夫だから。行く必要、無いかなって。

私は目元に笑みを乗せて、轟くんに言う。

轟くんは何も言わず、私の顔をしばらく見ていた。

そして、それから口を開いた。
轟 焦凍
取り敢えず、休め。
轟くんは私の片腕を轟くんの首へ掛けさせると、ゆっくり歩き出す。
あなた

ちょ、ちょっと待って、轟くん。私、1人でも歩けるよ…それに肩まで貸してもらうのは悪いし…


(前の制服の事もあるし、これ以上は私の血なんかで汚させるのは…)

轟 焦凍
良い。そこの影まで連れて行く。
芦戸 三奈
轟、サンキューね!あなたちゃんはしっかり休みなよ〜!
瀬呂 範太
木奥!落ち着いたらいつでも声掛けていいからな!
三奈さんや瀬呂くんの声を背中に受けて、私は轟くんにリードされながら足を進めていく。

が、


『ガクンッ』
あなた

っ…

皆の目が届かなくなった途端、突然、右足に力が入らなくなってしまった。
轟 焦凍
お、おい…
いつも冷静な轟くんも流石に驚いたらしい。

身体を支える事もままならなくなった私の足。
右膝からしゃがみこむ様に体勢が崩れるのを、轟くんが慌てて支える。
あなた

ご、めん…

轟 焦凍
…これは大丈夫じゃねぇな。
あなた

轟 焦凍
保健室に連れていく。文句は無ぇよな?

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