ギュッと唇を噛む緑谷が、下を向いて小さな声で話し出す。
────自分では鍛えていたつもりだった。けど、思った以上に身体が重い。
森の茂みの中、木の根を避けながら、人1人を乗せて進むのは楽なものじゃなかった。
背に乗ったあなたさんの身体に負担が少ないように、出来るだけ揺らさず歩こうとする。
肩の上のあなたさんの顔から涙が地面へと落ちていくのが分かった。
「とどろきくん」と、苦しそうな声が口から細く小さく聞こえてきた。
何度呼びかけても返事が無いことから、眠っていたのが分かった。
その後も───
目を見開き、理解が出来ず、思わず漏れた声。
気づけば、爆豪を皆が丸めこめ、今日の放課後には俺は雄英内の木奥が居るという部屋の前にコスチュームを持って立っていた。
(いや、)と迷いが生じて、青いバッグの中に入れて、元の壁側に置く事も考える。
青いバッグの中に入れようとした時だった。
『ガタンッ!』
何かが床に叩きつけられた様な大きな音がする。
確かに部屋からだった。
思わずドアの方へと振り返り、さっきまで抵抗のあったドアノブを勢いよく回す。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!