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2019/12/12

第2話

序章💧君に聞いた物語*2
「___だから、泣かないで、シルク」


と、あの夜、彼女は言った。

逃げ込んだ池袋のホテル。
天井を叩く雨の音が、遠い太鼓のようだった。
同じシャンプーの香りと、
なにもかもを許したような彼女の優しい声と、
闇に青白く光る彼女の肌。

それらはあまりに鮮明で、俺はふと、
今も自分があの場所にいるような気持ちに襲われる。

本当の俺たちは今もあのホテルにいて、
俺はたまたまのデジャヴのように、
未来の自分がフェリーに乗っている姿を
想像しただけなのではないか。

昨日の卒業式もこのフェリーもぜんぶ錯覚で、
本当の俺は今もあのホテルのベッドの上なのではないか。
そして朝起きると雨は止んでいて、
彼女も俺の隣にいて、
世界はいつもと同じ姿のまま、
変わらぬ日常が再開するのではないか。



汽笛が鋭く鳴った。

違う、そうじゃない。
俺は手すりの鉄の感触を確かめ、
潮の匂いを確かめ、
水平線に消えかかっている島影を確かめる。
そうじゃない、今はあの夜ではない。
あれはもうずっと前のことだ。

フェリーに揺られているこの自分が、今の本当の俺だ。

きちんと考えよう。

最初から思い出そう。

雨をにらみながら俺はそう思う。
彼女に再会する前に、俺たちに起きたことを理解しておかなければ。
いや、たとえ理解は出来なくても、
せめて考え尽くさなければ。

俺たちに何が起きたのか。

俺たちはなにを選んだのか。

そして俺は、
彼女にどういう言葉を届けるべきなのか。
すべてのきっかけは___そう、多分あの日だ。
彼女が最初にそれを目撃した日。

彼女が語ってくれたあの日の出来事が、

____すべての始まりだったんだ。