第4話
序章💧君に聞いた物語*4(短め)
ゆっくりと、
彼女は鳥居に向かって屋上を歩いた。
雨をたっぷり浴びた夏の雑草を踏むたびに、
さくさくという柔らかい音と心地好い弾力がある。
雨のカーテンの向こうには、
いくつもの高層ビルが白くかすんで立っている。
どこかに巣があるのか、
小鳥のさえずりさえがあたりに満ちている。
そこにかすかに、まるで別の世界から聞こえてくるような
山手線の遠い音が混じっている。
傘を地面に置いた。
雨の冷たさが彼女の滑らかな頬を撫でる。
鳥居の奥には小さな石の祠があり、
その周囲には紫色の小さな花が茂っていた。
そこに埋もれるように、誰が置いたのか盆飾りの精霊馬が二体あった。
竹ひごを刺したキュウリとナスの馬だ。
ほとんど無意識のうちに彼女は手を合わせた。
そして強く願う。
雨が止みますように。
ゆっくりと目を閉じ、願いながら鳥居をくぐる。
お母さんが目を覚まして、
青空の下を一緒に歩けますように。
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