百合花はあたしの周りを見渡して首を小さく傾げた。
いや、してるんだけど。
あたしは自分の言った言葉に対して、心の中でそう突っ込んだ。
ってかそもそも、クラスが違うのにわざわざウチのクラスまで毎日来るのもおかしな話だし。
いつもなら朝家まで迎えに来て、朝食までうちで食べてる浅ましい陽太が、今日は来てなかった。
体調悪くて休む日は必ずあたしにメッセージしてくるはず。
これ見よがしにあたしに心配して欲しくて……しないんだけど、それでもメッセージをしつこく送って来てるはず。
でも今朝はそれもなかった。だから、これはやっとあたしには先輩という彼氏がいるって自覚してくれま証拠に違いない。
確かに。昨日はそれどころじゃなくて気づきもしなかった。
それに帰りは先輩と一緒に帰ったし……。
百合花は考え込むように腕を組みながら首を傾げた。
あたしが肘で百合花の脇腹を突きつつ、ニヤついた顔でそう言うと、百合花は顔を真っ赤に染めた。
確かに……。
百合花と陽太の接点って、あたし以外にないかも。
陽太があたしを諦めてくれてこの教室にも来なくなったのなら、あたし的には万々歳なんだけど、そうすると百合花と陽太の接点が無くなってしまうのかぁ。
百合花は奥手だからなぁ。
陽太もあたしを諦めてくれたみたいだし、万が一諦めてなかったとしても、陽太の前でこれでもかってくらい先輩とイチャコラしてやればいい。
先輩には陽太とあまり関わって欲しくないって言われたばかりだけど、百合花とくっつける名目だったら協力してくれるハズ。
我ながらナイスアイデアじゃん!
うん、もう一押しだ。
百合花は押しに弱い。
百合花は再び考え込むように腕を組んだ。でもその表情は嬉しそうだ。
顔を真っ赤にさせながら、瞳がキラキラと輝いている。
そんな風に思い始めていた時、百合花が遠慮がちに顔を上げた。
じゃあ早速今日先輩に相談して、計画練らなくちゃ!
ダブルデートなんて初めてだから超楽しみなんだけど!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。