幼なじみの陽太は休憩時間になるといつもこうやってうちのクラスまで遊びにやってくる。
あたしははがっくりと肩を落として、そのまま机に寝そべった。
陽太は幼稚園からの幼なじみ。子供の頃はいつもあたしの後ろをついて回るような気弱な女の子みたいな男の子だった。
物心ついた時から一緒にいたせいだと思う。
陽太があたしの事が好きだと言うけれど、それはきっとヒヨコのすり込みと同じ発想で、そばにいたのがあたしだったってだけ。
正直、別にあたしじゃなくてもいいんだと思うし、そもそもあたしは陽太に米粒ほど、ごま粒ほど、ミジンコほどにも恋愛として興味がない。
誰のせいだと思ってるんだ。そんな風に言ってやる気力もなく、あたしは自分の腕を枕にして目を瞑った。
あたしがそっと薄眼を開けたその時だった。
あたしは目を閉じて徐々に近づいてくる陽太の顔にグーパンチを決めた。
陽太はこの世のものではない怪物でも見るような目で、あたしが殴った右頬を抑えながら身を離した。
あたしは拳を握りなおして、ハァーっと息を吹きかけた。
あたしは無言で陽太めがけて、拳を振りかざした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!