第3話

好みのタイプ
69
2020/01/06 21:34
百合花
百合花
春奈ちゃんって本当に陽太くんの事好きでもなんでもないの?
陽太が去って、やっとあたしの安息の時間が戻ってきた。

それなのに百合花のホットな話題はまだそれらしい。

あたしは立てひじをつきながらあくびをひとつ零した。
春奈
春奈
あー、ないない。天と地がひっくり返ってもないね
百合花
百合花
陽太くんってかっこいいと思うけどなぁ。というか、可愛い系のキャラ?
可愛いっていうのはまぁ、分かるにしても、カッコいいはなくない?

しかもあたしの言う可愛いっていうのともちょっと違うと思うし。

昔は女の子みたいにすぐに泣いてあたしの後ろに隠れて震えてるような子だったから、陽太がもし女の子だったのなら可愛いかったかも……とは思えなくもないけど。
春奈
春奈
何が残念って、陽太はあたしのタイプとは全く真逆なんだよねー
百合花
百合花
春奈ちゃんのタイプってどんな人?
春奈
春奈
あたしのタイプは、たける先輩みたいな人かな
百合花
百合花
健先輩って、あのサッカー部の?
健先輩は二つ年上の同じ学校の先輩。

サッカー部で爽やかな先輩は誰もが一度は憧れるであろう人気者だ。

カッコよくてジェントルマンな先輩。その上スポーツもできるんだからまるで絵本の中の王子様みたいだと初めて見た時からの一目惚れだった。
春奈
春奈
そう!   健先輩ってカッコいいと思わない⁈
健先輩と比べると陽太なんて月とスッポンだと思う。

陽太は頭は良い方だと思うし、見てくれだって正直悪くない。だけど、男らしさとかそういうものが一切感じられないというか。

基本的に無気力というかやる気ない省エネな性格してるから、運動なんて不得意で、まるで先輩とは対照的な位置にいると思う。
百合花
百合花
私は、陽太くんの方がカッコいいと思うけどな……
春奈
春奈
えっ⁉︎
まっ、待って、それって……。

百合花の頬が少しずつ赤らんでいく様子を見て、あたしの頭はひとつの答えを導き出した。
春奈
春奈
もしかして、百合花って……陽太の事好きだったりする?
百合花
百合花
あっ、春奈ちゃん、違っ!
百合花は今や茹で上がったタコのように顔が真っ赤だ。
春奈
春奈
えっ、違うの?
それにしては顔真っ赤だけど、真っ赤にするほど否定したいとか……?

でもそれなら納得できるかも……なんて思ってあたしは考えを改めた。
春奈
春奈
そうだよね、あの陽太だもん。さすがに違うよねぇ。ごめんごめん、変な勘ぐり入れちゃった
えへへっ、て笑いながら誤魔化しついでにあたしは百合花にウインクを飛ばした。
百合花
百合花
えっ?   あ、あの、えっと……
春奈
春奈
さすがにないよねぇ。あたしだってその意見には同意だよ。それなのにごめんね、変なこと言って
百合花
百合花
春奈ちゃん、あの、あのね……
春奈
春奈
でも危なかった。あたしが変に勘ぐって、万に一つでもなにか変な噂でも流れたりしたらさ、百合花に土下座ものだったし。
百合花
百合花
はっ、春奈ちゃん!
百合花はあたしの立てひじついてる方の腕をぎゅっと掴んで、ズイッと顔を寄せた。

その表情が鬼気迫るような圧を感じて、あたしは身を引いた。
春奈
春奈
あっ、えっと……ごめんね?
百合花の迫力に負けてそう謝ったときだった。百合花は耳打ちするようにそっと、こう言った。
百合花
百合花
私……陽太くんの事が、ずっと気になってたの……!

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