家に帰って来てからウィッグを被ってない片倉さんに、未だに緊張してしまう。
うつくしく儚い恋、通称「うつ恋」。
ちょうど1年前くらいに話題となった、青春ドラマだ。
やっぱり、片倉さんも知ってた。
というか、僕本人だから恥ずかしすぎる。
なんて言えないし…
僕は上手く断れず、見ることになってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「っく、うぅっ、ありがとうレン君…っ」
「…っ、なんで、お前ばっかりこんな目に…!」
「ううん…っ、さよなら、レン君」
バタンッ。
「…っく…ミオ…っ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
片倉さんは号泣していた。
僕はというと…話は切ないのに、自分の大根芝居っぷりをずっと見ていられなくて、途中で目を逸らしてしまった。
やばい、自分の話になってしまってた…
そう言って、片倉さんは僕を見つめる。
片倉さんの柔らかい笑顔に、ふいに胸が高鳴る。
『すーくん』
その時、頭に昔の記憶が過ぎった。
あれは…過去だ。
もう前を向くって決めたのに…
僕は、片倉さんに過去の話をした。
《続く》
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。