朝起きたら、自分の指に…………
赤い糸が巻き付いていた
試しにハサミで切ろうとしてみたけど、まるで″存在しない″物を切ろうとしてるみたいに刃が空を切るだけだった
いや、それはない…と現実を受け入れられない自分にツッコむ
グニっ
夢じゃ…ない?
ニュースキャスターにも、歩いている人にも全員に赤い糸が巻き付いていた
控えめに言っても赤、赤、赤…………
しかもピンッと張っている糸もあって一瞬首切られるかと思ったり…実体はないけどどうしても怖い…
まぁ、興味ないけど(ツンデレ風)
でも、目が慣れてきたら「あ、この人の運命の人はこの人か」
とか「あ、あの2人……。(ご想像にお任せします)」とか楽しめるようになってきた
まぁ、そうなると…ね?
運命の人まだ知りたくないっていう自分もいるけど…
好奇心に勝てるわけもなく…
歩くこと数十分…………(糸ぐちゃぐちゃで何度も見失いました)
僕の目の前には……
自分の家と同じくらい…見知った家があった
本日2回目の現実逃避をしだした頭をどうにか動かして何度も自分の指と目の前の家を見比べているけど…
赤い糸はまっすぐ…
″あいつ″が出てくる前に早く帰らないと-----
ガチャ
そう、この家は…瀬戸あさひの家だった…小さい頃から親同士の付き合いってのもあって今も時々ゲームしに行ったりしている
てか、家の前にいたのバレた…終わった…………
ない…?
…え?さっきまであった…よね?
絶対あった…え?何でこのタイミングで…?
なんか…目の前が…
瀬戸の言葉を最後に僕の意識は闇に飲み込まれていった
自分の家ではないけど見慣れた風景と瀬戸の匂い
…ん?
ガチャ
えっと…まず状況を整理しよう
1、朝起きたら赤い糸が見えてた
2、自分の糸を追いかけたら瀬戸の家に辿り着いた
3、なんか気づいたら瀬戸の部屋にいた
(この時間、約0.5秒)
あ、考えることに没頭しすぎてなんか返事してた…まぁ、あいつのことだし本気にはしないだろ
ドンッ
何この状況…っていうかこれ…壁ドンってやつ…?でも何で急に?っていうか…瀬戸顔整ってるなー…昔から女子からモテてたし頭はいいし性格以外は完璧だよな…まぁ、あの性格がいいって話し聞いたことあるな…あれ、そういえば瀬戸に振られた女子がなんか瀬戸には好きな人いるからって言われたって言ってたっけ…あの瀬戸が好きな人かー相当可愛い子なんだろうなーあっ結局赤い糸どこに繋がってたんだろう…(一旦思考停止)
【約1.3秒】
質問された意味が分からなかったけど…
怒ってる、というよりかは焦ってるような、いつもと違う雰囲気にどうしても動揺してしまう
瀬戸は僕の糸の行方が知りたいらしい…〇〇とかは瀬戸のご近所さんだ
多分、連絡無しで瀬戸の家に行くとしたらよっぽどの緊急事態か、今回みたいにゲーム以外の理由があるって思ったんだろ…その通りなんだけど
どうしても瀬戸の顔ドアップは直視できないので斜め下を見ながら言う
あ、ちょっと言いすぎたかも…
雰囲気に耐えられずにお礼を言って玄関に向かう
でも、なぜか壁ドンされた時の顔と最後の、ちょっと寂しそうな顔が頭から離れない…てかほんとあいつ顔いいよな…
なんかいつもと違う自分にも困惑しつつドアに手をかけた瞬間
グイッ
後ろから手を引かれた
声をだす間もなくーーーーー
唇に柔らかいものがあたった
その一つの行動で全てを理解した
顔が真っ赤になっていくのを感じる
恥ずかしすぎて顔をあげることもできない
ドアが閉まる
その瞬間、僕の目には自分の指から、瀬戸の指に繋がる赤い糸が見えた
明らかに、以前とは違う感情を抱きつつ…赤い顔を隠しながらそっと呟いた
【帰り道にて】
次の日、人の顔がちくわに見え、腹筋が鍛えられる1日になることは、まだ誰も知らない…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。