〜 蓮 side 〜
( 頭冷やしてこい )
家に帰って、心を落ち着かせる。
藍莉にキツく当たってしまった、
そんな俺に亮太は怒ったんだ。
せっかく藍莉がいつも通りに接してくれていたのに、
俺は昨日の事でいっぱいいっぱいだった…。
でも、
どうしても…昨日の事を考えてしまう。
亮太は何とも思わないの?
亮太に叩かれた頬より、心の方が痛い。
今、亮太にも藍莉にも合わせる顔がない。
ー
ーー
ーーー
店に戻る勇気を出せないでいたら、亮太が帰ってきた。
時計を見たらもう店は終わっている。
亮太…まだ怒ってるかな…。
寝室のドアを握り締めて、そっから進めない。
今亮太の顔を見たら泣いてしまいそうだった。
亮太の足音が目の前で止まる。
咄嗟にドアを抑えてしまう。
絞り出した言葉がこれだった、
手がかすかに震えている。
俺が…俺が謝らないと行けないのに、
違う…言いたいのはこんな言葉じゃない、
俺…、なんで…ごめんって言えないんだ…
苦しい…亮太…どうしたらいいの…、
ドアの前にしゃがみこんで、泣くしか出来なかった。
その後、亮太が何か言ってたけど、
全然頭に入ってこなくて、
何も出来ずに時間だけが過ぎていった。
ー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ー
もう涙すら出てこなくなって、
何もする気になれなくなっていた。
亮太が俺に話しかけている。
今…声を聞いただけで亮太の顔が浮かぶ。
亮太の悲しそうな顔は見たくない…
俺のせいだ…俺がいつまでもこんなんだから、
俺の望む……人生…、?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。