第2話

人気と不安
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2020/07/19 13:06
フレントsaid
もち
もち
フレントー!飯食いに行こー
今思えばこのセリフが全ての始まりだった。
時刻は午後4時の少し前。
俺はちょうどゲームしていたから起きていた。
フレント
フレント
お!いいですね!
もち
もち
なんか食いたいのとかある?
久しぶりだからちょっと高いのでもいいぞ!
フレント
フレント
じゃあ回転しないお寿司行きましょ!
もち
もち
容赦ねぇな‪w
分かった!行くか!!
急いで服を着替え、髪を整えて2人で家を出た。
フレント
フレント
この時間でも暑いですねー
もち
もち
そうだなー汗がどんどん出てくる
目的地に向かいながら、何気ない会話をしていると、
モブ1
モブ1
ねぇ!あの人クリームソーダの人じゃない?
モブ2
モブ2
お!ほんとだ!やべぇ!!
モブ3
モブ3
もちよもち!!
こんな所で会えるなんて!!
あっという間にもちさんの周りに人だかりができた。
すぐ近場の寿司屋に行こうとしただけでも、こんなに人だかりができる·····
タクシーに乗ることを勧めれば良かった。
モブ1
モブ1
写真撮ってー!!
もち
もち
お、おう
カシャカシャカシャ。
盗撮やら、動画やらでもみくちゃにされる。
いつもは、だらけてよく分からない服装でコンビニに向かうから、こんなことにはならないそうだが、今日はいかにも「もちさん」という感じでめちゃくちゃオシャレだ。
これだけ人が集まるのも無理はない。

全く人波がおさまらず、もうもちさんがどこにいるかも分からない。
もち
もち
フレント!どこだ?
ようやく俺はもちさんを見つけた。
人をかき分けて、もちさんの右腕を掴む。
左腕は他の女性2人に引っ張られている。
フレント
フレント
もちさん行きましょ!
思い切り引っ張って、無理矢理女性達から引き剥がし、「通してください!!」と言いながら人並みを抜ける。
それでもシャッター音やら歓声やらが落ち着かない。
フレント
フレント
どんだけもちさん人気なんだよ·····
俺は小さい声でつぶやいた。
もち
もち
フレント、ほんとごめんな、、
もち
もち
ちゃんと、寿司食べに行こう·····
フレント
フレント
もう、俺食べたいの変わったんでいいです。牛丼屋行きましょう。
もち
もち
いや、でも·····
俺は右腕を掴んだまま、近くにあった牛丼屋に入った。
もち
もち
ほんとごめん·····
フレント
フレント
もういいですから
なんか、俺はむしゃくしゃしている。
イライラしている訳でもなくて、感情がごちゃごちゃしているというか。
もちさんだけが人気で、俺の周りに人だかりが出来ないからムカつくとかそういう事じゃない。
ただ、Vine時代からずっと仲良かったもちさんが、本当はもう手が届かないところにいて、どんどん離れていくんじゃないかという不安。あのまま、知らない女性達に引っ張られて、急に消えてしまうんじゃないかという不安。

店員さんが牛丼の並を運んできてくれた瞬間、俺はかきこむように食べる。
もち
もち
ごめんな、寿司食べされられなくて
違う。
俺は、もちさんと一緒にいることに価値があるんだ。家ではどうしても食事時間がバラバラになりがちだから、誰にも邪魔されない、2人で静かな場所で一緒に飯を食いたかった。

そして、誰かに邪魔された時に嫉妬のような感情が湧き上がる。自分からそんな感情が湧き上がってくるのが1番怖い。

もちさんが食べ終わるまで、スマホをいじって無言で待っていた。
フレント
フレント
会計は別々で。
もち
もち
あ、いやけど·····
そう言ってすぐに俺らは店を出た。
店を出た頃にはもう日は落ちて、真っ暗だった。
もち
もち
ほんとごめん
フレント
フレント
さっきからなんで謝ってばっかりなんですか?
もち
もち
いや、だって·····
フレント
フレント
気づいてくださいよ!!
そう言って俺は走り出した。もちさんと俺の住んでいる家から反対方向へ。
謝り続けてることに気づいて欲しいんじゃない。俺のこの感情に気づいて欲しいんだ。
無茶なことだってわかってる。無茶なことを頼んでいる俺にもむしゃくしゃしている。

どんどん涙がこぼれてくる。
ただただひたすらに、俺は村上チハヤの家に走り続けていた。

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