そそくさと、色々準備を終えた私は急いでぱたぱたと小走りで悠の元へ。
悠は相変わらず、玄関で私を待っててくれた。
「待たせちゃって、ごめんね」
「ううん、全然」
言葉数は少ないけど、その二言が安心感を与えてくれる。
「いこ」
差し出されたその手を、迷わず掴んだ。
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「公園デートは無しになっちゃったね……」
雨降り。公園で食べるつもりだったお弁当は持ったままで。
傘を差しながら二人で縦に並んで歩く。
近所の道はけっこう狭くて。
ほんとは並んで歩きたいけど……
さすがに車に跳ねられるのはヤだし。
相合い傘も良いけど、ちょっと端っこが濡れちゃうもんね。
(取り敢えずいこ、って悠がメッセージ送ってきたから、会いたかったし何にも考えずにに来ちゃったけど)
ばしゃぁ
「みゆ、車!」
その一言で我に返る。
「……!!!」
隣を走る車の勢いが激しくて、巻き上げた水溜まりの飛沫に危うく直撃するところだった。
何とか悠の声で危機一髪、水飛沫を避けることが出来たーーお礼を言わなくっちゃ。
「濡れなくて、良かったね」
にこり、こっちをみて笑う悠。
何その笑顔。眩しすぎるよ……
(続く)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!