第3話

独り
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2021/04/09 20:32





番組が続く間、もう彼と組むことは無かった。


けれど、元からの知り合いが彼と同じチームになったりしてたから、俺も何となくその人達に混ざって、頻繁に彼と顔を合わせていた。
俺からも絡みに行ったし、彼からも絡んできてくれた。
本当に、毎日のように一緒にいたんだ。


ふざけるとすぐニヤッと笑ってくれて、失敗して落ち込んでると励ましてくれる。


良く気が付くな。


俺のことなんか、見てないようなのに。


彼の周りにはいつも人がいて、楽しそうな雰囲気が漂っている。
いくつもある笑顔の中心にいて、彼が何か言うと、いつもわっ、と沸いた。


いるよな、こういう人。
あたたかくて、親しみやすくて、心に何か熱いものを持ってて、クラスの人気者になるタイプ。
イジメなんて絶対にしないし、させないタイプ。


一方俺はと言えば、かたぶつクラス委員。圧倒的お世話係だ。
笑いを取ろうと必死になって、明るく振る舞ってはいるけど、なんか、浮いてる自覚はある。



だから、最後の投票で彼が残っても、何の不思議も無かった。


俺自身は、脱落が決まって、長い緊張から解放されて、また元の、自分の居場所探しの旅に戻るんだ。
もうダメだなって、覚悟はしていたから、泣く事もなく受け入れた。


もっとやれる事はあったはず。


でも、精一杯だったよ。


今の俺はまだまだこの程度なんだ。



俺のパートナーは、リーダーは、一体どこで何してるんだろ。
今頃水でも飲んでるのかな。


ここにもいなかった、俺の大切なメンバー達。
どんな奴らなんだろう。

早く会いたい。
早く一緒に練習したり、楽曲について語り合ったり、したいなぁ。


その中に、彼みたいな、優しくて熱い、才能にあふれた男がいるといいな。


彼みたいな人は、ふたりといるはずもないけど。


離れると寂しさが募る。
毎日のようにつるんで、顔を見て、特徴的な声を聞けた幸せ。
これからは、今までのようにはいかない。



彼が手を取る人は一体、どんな才能にあふれて、どんなにキラキラしてるんだろうか。


いいなぁ。



そんな人になりたかったな。














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