第2話

特徴的な声
202
2021/04/10 11:15
余裕が無かった。

とにかく頑張ってアピールしなきゃって、そんなことばっかり考えちゃって。
面白くもないギャグを飛ばして苦笑される繰り返し。


クラス分けテストの結果はC。
可もなく不可もない。
目立つものが無いってことなんだ。


みんながキラキラして見える。


おかしいな。
俺だってキラキラなはずなんだ。
そりゃ、見てすぐカンペキに踊ったりはできないけど、音は取れる方だと思うし、明るくニコニコできてるし。


違うな。
わかってる。
まだまだなんだ。


くっそぉ。

Aは無理でもBには入ろうよ、俺。


「おい」


特徴的な声に驚いて振り返ると、彼が立っていた。


「あきらめんなよ」


彼の手が伸びて、俺の肩をつかむ。
その手の平が暖かいから、自分の体が冷えているってわかる。

俺をぎゅっとつかんだ手は、離れながらポンと肩を叩いていった。

彼の唇が左にくっと上がって、挑戦的に俺を見上げていたから、俺はへらっと笑ってみせる。


「一緒に頑張ろうぜ」


俺の腕をポンポンと叩いてから、彼は離れて行った。


つかまれた肩に触れてみたけど、熱は残っていなかった。


俺、彼の声が好きだなぁ。
まるで良く鳴るチェロのようだ。






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