「なぁ、なんなん?あれ」
「まぁまぁ、落ち着きーな」
私の言葉に龍太くんが肩に手を置いて宥める。
「やって…ちょっと怒ってくるわ…ぐぇ!」
「待たんかい!」
と言って私のフードを引っ張る龍太くん
「苦しいわ!殺す気か」
「ごめんごめん」
余程私の声が面白かったらしい、笑いながら謝ってくる。
私たちの目の前には、振りが曖昧の状態で音合わせをしてるなにわ男子の信号ブラザーズ。
「もう、俺らの役目やないって、そういうん。」
今まではできていない、真面目にやれと言ったことは私や龍太くん、こうちゃんが言ってた。
実際、そうやって怒って喧嘩になったこともある。
「あいつらは、グループや。グループのメンバーのことはグループの奴らで何とかせなあかん。」
「せやけど、、本番明後日やで?間に合わんやん」
「アイツらも環境変わって忙しいし、、気持ちや体力が追いついてないんやろ。ちょっと見守っといたり」
龍太くんは無駄に歳食ってない。
「おい、なんか俺の事悪く思ったやろ?」
「お、、思ってないし!?」
私の顔を見てふっと笑い髪の毛をクシャクシャにしてくる。
「無駄に、リア恋やん」
「はぁ?無駄ってなんやねん!」
口に出てたらしい。慌てて龍太くんから逃げた。
次の日に、何とかダンスも完成形まで持ってきたなにわ男子。年上組が何とか士気を上げて完成させたんやろう。大吾と丈くんの顔は疲れきっている。
このままで持つんかな、なにわ男子。
まだできてまもないのに、注目されているこのグループに心配事しか浮かばない。
それでも、部外者でしかない私は黙って見守るしか出来ない。
そのまま何とかクリパの幕も開き、半分をすぎた頃。
めずらしい来客があった。
「やぁ、元気にしていたかい?」
「ジャニーさん。」
何の予告も無しに来たもんだから、スタッフはバタバタしている。
「また、突然きたから大人達がバタバタしてるやん」
「それが彼らの仕事さ」
とニヤリと笑う
「さすが。。。で?何か用事があるんやろ?」
「Youすごいね!なんでわかったんだい?」
「用事がないと、大阪まで来ないでしょ?」
「確かにね!Youの東京行きのことなんだけど、1月のコンサート終わったらすぐに加入だから。ユニットはSixTONESね」
「SixTONESは了解してるんですか?」
「うーん。まちまちかな。微妙な反応。」
当たり前だ。自分がSixTONESなら絶対に賛成はしない。
「そうそう、今日は僕だけじゃないんだよ!」
そう言って廊下に出ると、ほっそいシルエットの男がジャニーさんと一緒に入ってきた。
「…久しぶり。」
気まずそうにキャップを脱いだのは田中樹。
「お久しぶりです。」
「SixTONESの中で反対派の代表として彼を連れてきたんだ。」
「反対…か。まぁ当たり前やんな」
私の言葉に驚く樹。
「やって、、私やって嫌ですもん。自分のユニットに訳も分からない奴が入って来るってなったら。」
「わりぃ」
「謝らんといてください、私も6人のSixTONESが好きなんです。樹君たちは悪くない。」
「まぁまぁ、なに君たち勝手に話を進めてるんだ。僕は君たちだからできると思ったんだ。まぁ、今日は樹と楽しむよ!」
「はい。楽しんでください」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!