本番前。
恒例の円陣を組む
「じゃあ、大ちゃん!」
と康二。
「いや、皐月」
と大吾。
「ふふ、何譲り合ってるねん笑笑…龍太くん!」
「おれぇ!?」
驚きながら前を向き直る龍太くん。
「大阪ラストです!!俺らの底力見せてやりましょう」
「おぉー!」
「盛り上がれんのかー?!」
「俺ら次第やー!」
「行くぞー!」
「うぉーーーー!」
関西Jrとして、最後の円陣。
絶対に忘れない。
Cant'stopから始まるこのコンサート。
誰にも時間は止められないから…私たちの覚悟と共に歌う。
「…皐月!」
衣装を着替え終わり、次の曲まで待機をしていた時。
「丈…」
後ろから、衣装も中途半端に着た状態で来た丈。
「俺らは絶対にてっぺんとる。」
真っ直ぐな瞳が私を捉えた。
「お前は?皐月はどうする?」
「…私は私のやり方で、私の居場所でてっぺんとる。」
私の宣言にニヤリと笑う丈。チャシャ猫か!って顔突っ込むと肩パンされる。
「俺は、今までお前がしてきた選択絶対間違ってないと思う。だから!これからもお前はお前の思う最高の選択をして、いつかてっぺんの景色、一緒に見よ。」
丈が出てきた拳に自分の拳を合わせる
「…中二病か笑笑」
「うっさい」
私のツッコミに笑いながら頭を撫でる
「俺はいつでも、どこでもお前の味方やからな」
普段照れてそんなこと言えん癖にこーゆー時だけ、こんなこと言えるから、意外とリア恋やねんなー
丈の後ろ姿を見ながらそんなことを思う。
終わらないで欲しいと思ったコンサートもどんどん進んでいき、ソロ曲を歌わせて貰う時間になった。
「…本当は、千秋楽やからって特別な事したりするの、あんまり好きじゃないというか、やりたくない派なんですけど…」
babybabyを予定通り歌った後に、もう一度ギターを構え直しながら話すと、歓声が起こった。
「これね、どうしても歌いたいって思って、わざわざ電話で許可を取ったんですよ。…Jr生活が長かった私は、色々な選択を迫られました。その、選択を後でこうすれば良かったとか、しなければ良かったとか、後悔することが多くて…でも、その度に周りにいる仲間が皐月は絶対間違ってないって言葉にしてくれるんです。ちびっこが増えて、私の入っていないユニットが出来て、関ジュもファンの皆さんも、凄く不安だと思います。でも、みんながその時最高だと思って選択したこと一つ一つ絶対間違ってないんです。」
1度言葉を切ってファンを見ると泣いている。
「失敗しても、その失敗は絶対あなたを成長させることが出来ます。私はそう思うんです。」
「そして、失敗を恐れず挑戦し続けてください。それが正しいかなんて、本人にしか分からないんですから、正しいと思ったもの勝ちですよ!…っほら!泣かんのみんな笑笑」
きっと裏で関ジュも泣いてるんやろなーって想像したら、泣きそうだった私も、笑うことが出来た。
「私は挑戦し続けます。ジャニーズに入ったからには、この大きな場所でずっと、いつか自分が間違ってなかったって思えるまで、頑張ります。だから、着いてきてください、、、想いを込めて歌います。」
「…間違っちゃいない」
しげさんが作ったこの曲。リリースされる前に、3人のレコーディングにお邪魔させてもらった。
ジュニア時代凄くお世話になったジャニーズWEST兄さん。
重岡くんと凄く話をしたとか、遊んだってことは無かったけど、あの人はいつも欲しい言葉を欲しい時に言ってくれるような人やった。
なんか、こんな風に卒業する私たちに作られたんじゃないかって勝手に思ってしまうほど、
ジュニアの私たちに響く曲。
レコーディングの時、濵田くんがこっそり教えてくれた。
「しげ、この曲褒められた時、龍太くんや、皐月、康二に届いたらいいなって言ってたで」
間違っちゃいないよな
消えたくなった夜も
逃げたくなった朝も
まあまあかっこいいんじゃない
……
頑張れなくていい嫌になったっていい
情けなくていいダサくていい怖くなってもいい
どんな自分だっていい
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。