「おお!やっと来たか」
指定されたご飯屋さんの個室のドアを開けると寝ている龍太くんと携帯を片手にビールを飲む文一くん。
「すいません遅くなってしまって」
「ええねんええねん!龍太は寝てもーてるけど」
「文一君、明日の時間とか大丈夫ですか??」
「大丈夫大丈夫ー、ほら皐月、さっさとなんか好きなもん頼めよー。また痩せたやろ」
ほんま龍太といい、皐月といい痩せすぎやとぶつぶつ文句言いながら自分はお酒のページを見てる。
昔っからご飯に行くと絶対に食べろ食べろって人に食べさせて、自分はお酒しか飲まないのが文一くん。
「じゃあ唐揚げと、蒸し鶏のサラダ、あと枝豆とレンコンまんじゅうで〜」
遠慮なくごはんを頼んで来たビールで乾杯する
「…で、龍太くんはなんで私が来る前に潰れてるんですか?」
「まぁな、関西ジュニアは変わっていくし、こいつも悩んどったんやろ。」
関西ジュニアの最年長、その肩書にも30歳になると卒業という形がちらつくようになってきた。
「…龍太くんは、なんて言ってるんですか?」
「んー?それは、本人から聞いて〜」
たしかに、ここで文一君から聞くんはおかしいかもな。と思って、到着していた唐揚げやらを頬張る。
「で?皐月はどーするんや?」
「……。」
「まぁ無理に話せとは言わんけど、話すことでわかることもあるんちゃう?おれ、聞き流すんは得意やで?」
「…そーですよね…さっき滝沢君と大倉くんと話ししてきたんです。」
「おお」
滝沢くんの名前は想定外だったのか文一君が目を見開く
「まぁ、私達の今後についての話でした。康ちゃんにはSnowManへの加入の話が上がってるらしいんです。まだ、返事は保留らしいですけど…で、わたしも東京に来ないかと言うお誘いでした。」
「…そーか。それは康二とSnowManに入るとかじゃなく?」
「…はい。まだ、決定ではないみたいなんですけど、SnowMan以外のユニットに加入しないかという話です。」
さすがの文一君もびっくりしている様子。
今まで、色々な人を見送ってきた。
違う道を選んだveteran兄さんたち、とーまくん、まと、じゅんやくん。
東京に行った廉や紫耀。卒業した文一くん。
いつも見送ることに慣れていて、自分が関西から離れるなんて想像もしていなかった。
「…返事は?」
「まだです。。。正直、東京に行くからと言って、デビューが保証されるわけでは無いですし…」
「そやんな。」
「こうちゃんはSnow Manに入ってもやって行けると思うんです。でも、私は…イマイチ滝沢くんにハマっていない気がして…」
「…どーゆー事?」
「滝沢くん、憶測ですよ?憶測ですけど、Snow Man推しなんです。だから、こうちゃんがSnow Manに加入するのも本気で必要な人材だと思ってるんです。でも、私は…」
カランと文一くんの飲むお酒の氷がなる。
一瞬の静寂。
「俺は、滝沢くんみたいに、すごくないしカリスマ的な目があるわけじゃないけど、皐月の力は、関西だけじゃなくて東京でも必要とされると思うで?」
文一くんの目は私の奥底まで見通していた。
「……。」(龍太)
「龍太くん、どー思います?」
「バレとったか。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。