第59話

電話
629
2021/02/06 13:51
何故か止まらない汗に心配されながらアンコールまで来た。

「まだまだ行くぞ〜!!!」


ジェシーの掛け声でいっせいに花道を走り始めた時、


「えっ!」

「皐月っ!」

膝がガクッと曲がり隣にいた北斗が支えてくれる。


自分でもびっくりするくらい足に力が入らない。


心配かけないように座り込みながら爆笑の演技をする。

花道周辺のファンがざわつき始めた。
ごめん北斗…と思いながら、両手を広げる。

北斗もびっくりしながら、おんぶの体制になってくれ、私をおぶってくれ、また大歓声。

「ごめん北斗疲れてんのに」

「いいけど、お前いつからこの熱?」

「ん?熱…?」

「え?」

マイクを通さず話しながらみんなのところに走ってくれる北斗。

熱って言ってるけど…?

お互いにハテナ状態でメインステージに戻る。


「だいじょーぶかよぉー!」

というジェシーの言葉にへへへと笑う。

「楽しすぎて、力配分間違った笑笑」

北斗に下ろされて何とか立ってるけど北斗の肩がないと立っていられない。

「まじ、ほんとに大阪楽しいねぇー」

ふわふわとまた喋り出そうとするとイヤモニから
「早く閉めて、皐月下げて!」

という慌てた声。

話そうとしていた皆の視線がこちらに向く。
私はもう、思考がふわふわして何を言われているのか分からない。

「じゃあ、皐月のね体力が底ついて帰れなくなる前にね、閉めましょうか。」

樹の声でブーイングが起きながらも、

「お前ら早く寝ろ〜」

とか言いながら

「俺たちが〜SixTONES!!!!!」


と閉める。

「皐月〜慎ちゃんが姫抱きしてあげよう〜」

「え〜いいよ〜」

と言いながら体にほとんど力が入っていない私はされるがまま、歓声を浴びながら袖にはける。

「皐月!!慎太郎このままこっちに!」

ちゅんが焦った顔で慎ちゃんに指示を飛ばす。


「おい!皐月!皐月!」

慎ちゃんの焦った顔を最後に私の意識は飛んだ。


次の日

樹side

「悪いな、朝から」

ちゅんに呼び出され、朝から集まったのは昨日の公演から入院している皐月以外のメンバー

いつもは寝坊する俺も、皐月が心配で朝から起きていた。

「皐月の事ですか?」

北斗の問いかけに、首を振るちゅん。

「お前ら、落ち着いて聞けよ?」

ちゅんの悲しそうな、疲弊しきった顔にただ事ではないことを悟り、身構える皆。

「……ジャニーさんが昨夜倒れて、意識不明の重体になった。」


「…え?」

きょもの言葉が重苦しい空気の中にどサリと落ちる。


「昨日、お前らがライブをおわってすぐジャニーさんがくも膜下出血で倒れたって報告が来た。あの時は現場も皐月の事で慌ただしかったから俺も連絡に気づかなくて、病院に送ってちょっとした時に気づいた。お前らもライブで疲れてるし、皐月のこともあったからきちんと俺が状況を把握してからと思って、今日になった。」

ちゅんの言葉に誰もが言葉を発せずにいた。

「とにかく、、俺は今からすぐ東京に行かないといけなくなった。皐月には、まだ言ってない。さっき様子見に行ったら落ち着いてる。」

未だに誰も言葉を発せずにいる。
これから俺達はどーすればいいのか、何時の新幹線で東京に帰るのか、皐月のことはどうするのか

色々、聞かなくちゃいけねーことばっかなのに、口から息を吐くだけで精一杯。

「樹…樹…おい!樹!」

気がつくと、俺は床に座り込んで目の前にはジェシーの顔がある。

「落ち着け樹!息吐いて!ほら!」

そう言われて初めて自分が過呼吸気味になっている事を知った。

その後ちゅんがジェシーや北斗、高地に一言二言伝えて、出ていった所を見送り、周りを見渡せば、きょもは椅子に頭を抱えて座り込み、慎太郎も北斗にしがみついていた。


「…ってたんだ。」

「え?樹なんて?」

「昨日…ジャニーさんは自分がこうなるって…分かってたんだ…」


俺は昨日のお昼にかかってきたジャニーさんからの電話を思い出した。





「You、皐月のことよろしく頼んだよ」
「どうしたの急に」
「いや、皐月の凱旋見たかったなって思ってね」
「…皐月に変わろうか?」


「ううん、時間ないからいいよ。You達の勇姿見届けられないことが心残りだよ、皐月には謝っといてね、」

「…え?」

「じゃあ僕は行くよ」

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