第37話

君と僕〜康二〜
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2020/05/16 00:57
康二side

Youたちジャニーズに来ないかい?

そうやって声をかけてもらって入ったジャニーズ。
先輩たちからはお!エリートやん!とか言われて、得意になってた。

結構誰とでも仲良くなれる僕やけど、1人だけ、距離の詰め方が分からない人がいた。

朝本皐月ちゃん。

俺より年下やけど先輩で、入る前に勉強したアイドル雑誌やライブ映像には一切写っていなかった

特に何かを話した訳じゃないけど、レッスン中は基本真顔で、あんなに感情を表現しない人は初めて見た。

「なーなー、流星。皐月ちゃんと喋った?」

レッスンの帰りにほとんど同期の流星に聞く

「いや、ないなぁ。でも、あの人も今年入ったらしい。でも、ジャニーズから表に出るのは禁止されてるんやって」

「え!そーなん?」

「うん。金内くんが言ってた。」

「なんかさ、ちょっと怖くない?笑わへんし」

俺は思っていることを素直に聞いた。

「なんかな、金内くん曰く、元はめちゃめちゃ笑ったりする子やったのが最近、暗くなったらしい。先輩らが事情聞いても全然分からへんねんて」

「そーなんや」

まだ、喋ったことのない先輩。でも歳で言ったら俺より年下のまだちっさい女の子や。

噂だけで判断したらあかんけど、どーにもやっぱり話しかけにくい


皐月ちゃんの話を聞いてから、数ヶ月たち、ライブのバックに着くことになった。

まだ、話しかけれていない俺はびっくりした。

まだ、入所も俺らと変わらへんのに、その場を取り仕切っている皐月ちゃん。

「あっくんとじゅんくんはその曲で下手から帰ってきて、そのまま上手の手前で出ます。」


「皐月!曲順、これとこれで合っとるか?」

「龍兄!それ違うやつです!」

「皐月!衣装のサイズって何時まで?」

「12時までに衣装部屋に持っていってください!そしたらサイズ調節してもらえます!」

と、先輩後輩関係なく、皆皐月ちゃんに声をかけていく。その全てに答えていく皐月ちゃん。

まだ、入って変わらないのに、大きな差が出来たみたいで悔しかった。

俺は、ジャニーズに入ってこの時初めて悔しさを味わった。






それから、俺は業務連絡しかしない距離感で接していた。それは俺だけじゃなくって多分皐月の同期と呼べるであろうメンバー全員だ。

元々先輩たちに人一倍可愛がってもらってたし、俺らと話出来なくても困らへんやろってちょっと卑屈な考えもあった。


俺らが仲良くなるまではまだまだ時間がかかった。

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