第31話

不安
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2020/04/25 11:56
皐月side

「さっ着いたでぇー!」

村上くんの運転で着いたのは、何度か行かせて頂いた横山くんのお家の近くだった。今日は東京の引越し先を見に行こうと村上くんに誘われた。
村上くんが忙しすぎて、年始の今日しかゆっくり付き添えないらしい。

「…ここ、横山くんち近いですよね?」

「おお、よー覚えとったな。場所探しとる時にうちのメンバーの家が近い方がええやろ思てな。ちょうど横んちの近くにいい感じのマンションあったから。」

そう言って鍵を開けてエントランスに入る。

中にはホテルマンのような人が2人。

「ご苦労さんですぅ〜」

と当然のように挨拶をし、スタスタ歩いていく村上くん。村上くんが探してくれたとはいえ、こんなにいいとこなんかと萎縮してしまう。

エレベーターで上がるとびっくりすることに最上階。

「いやいやいや、村上くん。最上階なんて…」

と慌てる私にがははと笑う村上くん。

「ゆーても5階やんけ、そんな慌てるもんでもないやろ」

さすが…大物。
何を言っても動じない。

「ここな。」

そもそも最上階には数える程しか部屋がない中、1番奥の部屋に着いた。


「むむむ村上くん。いい所すぎるんですけど…」

「なーに萎縮しとんねん。」

とりあえず入れと言われて入ったら、長い廊下。

リビングに入ると、当然のように並んでる数々の家具。全部エイト兄さんたちのお古だという話だったが、電化製品には新品のビニールが被っている。

「村上くん、新しいのんあるじゃないですか!」


「当たり前やろ!電化製品は新しないとすぐ壊れるんやで!?これからずっと東京住むんやったら、長期的に考えてやな、サラの方がええやろ」

村上くんに言われて初めて気づいた。
そうだ。自分はこれから、こっちに住むのだ。

セキュリティは万全じゃないといけない。何かあった時のためにエイト兄さんの近くに住まないといけない。壊れないように電化製品はさらやないといけない。

自分が萎縮してしまっていた数々は、全部こっちに引っ越してくる時に考えておくべきこと。

自分の考えの甘さを痛感した。

「まぁ、ゆーてもこの辺はジャニーさんとタッキーが揃えてんけどな。」

と指さすのは大きすぎるテレビとHDD。

「みんな、なんやかんや皐月のことを1番心配してるんやろな。タッキーなんか、ビビるくらい連絡くれて、引越しのこと聞いてきよったわ」

関西ジャニーズJr出身だから、自然とエイト兄さんに1番に頼ってしまう。滝沢くんには遠慮してしまう。それを全部、見透かされていたんだと気づいた。

やっぱり先輩達には敵わない。


東京に来ること、不安で不安で仕方なかった自分に気がついて、同時に、心配ないって思えた1日だった。

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