第61話

真実
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2021/04/10 06:30
樹side

あの後結局全員が皐月の部屋に行くのは良くないということになり、俺以外は仕事もあるから東京に帰ることになった。

皐月が俺らにも反応してしまうということは、たくさんの男がいる事務所も、ジャニーさんの病室も、ましてや、東京まで帰る新幹線も乗れない。

見知らぬ男が嫌なら最悪俺が運転して帰るけど…


さっき安定剤を入れてもらい落ち着いて寝ている皐月。熱もなく、男性恐怖さえ無くなれば普通の生活ができるのにな…ジャニーさんにだって会いにける。

「皐月…なんで…お前ジャニーさんに会わないといけねーんだろ?コンサート楽しかったって言いたいんだろ?」

寝ているから帰ってくるはずのない返事。
ほんまやん!はよ起きな!と返事が返ってくることを期待してしまう自分に嫌気がさす。


「過去…か」

先生が言うには、過去に何かトラウマがあると、精神的に不安定な状態になった時、そのトラウマが出てきてしまうことがあるらしい。

やっぱり、無理か。

俺はある人に電話をかけた。





「なーぁー!淳太ぁーーー!なぁなぁー!」

「なんやねんうっさいなぁ」

いつものだる絡みのシゲをあしらいながら本を読んでると

「淳太くん!携帯鳴っとるで〜」

と照史が携帯を持ってきた。


「樹って出てるけど」

照史が画面を見て心配そうに眉を下げる。
俺も照史も皐月のことだと悟った。


「…もしもし?」

「あ、お疲れ様です。田中です。」

「おん。、どした?」

「皐月のことなんですけど、、、今大丈夫ですか?」

樹の言葉を確認して俺は照史を手招きした。

「まってな、場所変えるわ」

俺と照史は楽屋のそとにでた。

「おん。、ええよ」

スピーカーにして2人で話を聞く。

「実は…」

話を聞いて驚いたけど、やっぱりとも思った。

昔から弱みを見せない皐月の事や。
昔から面倒見とった俺らにも隠してまう性格やし。

「樹。今まで支えてくれとってありがとうな。」

俺が言った一言に電話越しに泣き始める樹。泣いたのが落ち着いてから、ある話をする。

関西ジュニアでも兄組しか知らない、皐月ですら知らない話を。

「実はな、皐月は両親がおらへんねん。」

「え?」

「いや、実際は居るねんけど、縁が切れとる状態ってことやな。」

「え、でも弟と妹は?」

「あぁ、あの子らは皐月が稼げるようになってから引き取って、それまで施設におった。」

「この話はほんまは皐月から聞かなあかんのやろうけど、しゃーない。」

「皐月の家族は両親と双子の妹弟やった。でも、皐月が小学校1年の時に父親が母親にDVをしている事がわかって離婚。初めは母親が1人でちっさい子供らを育てとったらしい。」

樹side

数分の説明が何時間にも感じた。
俺の知らない、本人ですら知らない、いや覚えていない過酷な過去。

皐月がこんな状態になってしまったのもうなずける。ただ、そこからどうやって支えたらいいのか、俺たちの力でできるのか、不安になった

「淳太くん、照史くん。俺達に、出来ますかね…」


「正直、できる出来へんじゃない、やるしかないねん。で、それは俺らや関西JrじゃなくてSixTONESや。」

自信がなかった俺の気持ちは、淳太くんからグーパンチをくらった。

「…そおっすよね、頑張ってみます。」

俺のまだ、頼りにはならないようなか細い決意に、淳太くんの空気が和らいだのが電話越しに伝わった。

「まあ、俺らはいつでも相談乗るし、お前らのこと支える。とにかく、今は傍に居てやって欲しい。こないだご飯行った時、樹の話ばっかしてきよったし、だいぶ樹には助けられてる思うわ、ま、こんなん教えたら皐月嫌がるやろうけど、樹たちじゃなかったら、東京には来てなかった、何があっても私はここで頑張るってゆーとったわ」

淳太くんの暴露に頬が少し緩む

「淳太くんも照史くんもありがとうございます。とりあえず皐月をジャニーさんの所に連れて行けるように頑張ります。」

俺は電話を切って皐月の病室に向かった。

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