第33話

新幹線と仲間
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2020/05/09 05:36
「こっちやこっち!」

新幹線に乗るのに東京駅で横山くんと待ち合わせしていた私は、駅で迷子になり、危うく乗り遅れるところだった

「お前、何回東京きてんねん」

苦笑いで横山くんに突っ込まれる。東京と大阪の往復、もう何回やっただろうか…

「いやぁ、なんか分からなくなるんですよね〜」

「お前大丈夫か?これからこっち住むんやで??」

「ほんまですよね〜」

席に落ち着き窓の外を眺めていると、隣の横山くんは寝る体勢に入った。

「…ほんま、何回往復したんやろ」

思わず呟く。

初めて東京に新幹線で行った時は、関ジュのメンバーで東京のテレビに出ることになった時。

関西ローカルじゃないテレビなんて初めてで、ウキウキしながら丈と、はしゃぎ倒して怒られたなぁ

でも、帰りの新幹線は女やからって出して貰えなかった事が悔しくて、みんなが疲れて寝ている中、声出さんように泣いていた。

裏方として、先輩のコンサートについて行く時はジュニアの動きとか衣装とかの資料ひたすら読んで、淳太くんや照史くんに質問ばっかりしとったな

帰りの新幹線は、紙いっぱいに反省点を羅列して、ようVeteran兄さんたちに引かれてた。「おれら、そんなあかんかった!?」って

表に出ることが公認されたくらいの時は、金曜日の学校が終わる度に新幹線に飛び乗ってた。
レポートやら宿題やら、試験勉強やらひたすら持ち込んで、酔うのもお構い無しに勉強してたっけ。時間がある時はよく関ジャニ兄さんたちが迎えに来てくれて…

1回すばるくんが来てくれた時、そのまま気晴らしにドライブに連れて行ってくれて、ジャニーさんに「You!こんな夜にどこ連れて行ってたの!皐月が不良になっちゃうでしょ!」って怒られてた。

帰りはもちろん勉強…せずに爆睡やったなぁ。よくそのまま新神戸まで行ってしまって、淳太くんが迎えにきてくれてたんよな。

キンカンに入れた時の連絡もたしか、東京からの新幹線の中で聞いたんやっけな。嬉しすぎて、いつも爆睡やった道のりも目ギンギンで帰ってたっけ。

でも、酷かったのは、キンカンから脱退して東京の仕事に行く時やった。東京の仕事はありがたいことやって分かってたけど、行くの嫌で仕方なかった。確か、途中で気持ち悪くなって名古屋で降りてもた時もあったなぁ。そんなこと初めてで、泣きながら丈に電話したんやっけ。そしたら、駅で待っとけって、新幹線で名古屋まで来てくれて、一緒に東京まで行ってくれたんよな。
で、確かマネージャーに一緒に謝ってくれた気がする。

BADや、7west達がデビュー決まった時にまいジャニの取材で行った時の帰りも懐かしい。「みんなで絶対デビューしよな」って雰囲気のキンカンメンバーに入れなくって悔しくて泣きそうになってたら、「いや、皐月もメンバーやからな」って大吾に言われて大号泣したっけ?

廉と紫耀が東京に行くことになって、2人の出てる舞台を正門と2人でたまたま見た帰り、初めて正門が私の前で泣いたんよな。
「2人に置いていかれたことよりも何より2人の姿見て、悔しいより先に、すごいって素直に思ってしまった自分が悔しい。」
うちらと同期で同い年ましてや廉なんかは、年下やったのに、全然ユニットに入れていなかった正門。自分はまだ、廉と紫耀の件を悔しがれるほど何かをやったわけじゃないって、悔しがってた。

FUNKY8に+1メンバーとして、入れてもらって全員で東京行った時は楽しかったなぁ。ちょっと昔の自分がちっちゃかった時のわちゃわちゃ感に似てて、いつも笑顔が絶えへんかった。


最近は個人の仕事が多くて新幹線も1人で乗ってたけど、誰かと乗ると、その時の思い出が鮮明に思い出せる。

でも、もうこんなに往復することも無くなる。なんか、寂しい。でも、やっぱりこんだけ苦楽を共にした仲間が離れててもいる。心強い。なんがそう思えるようになった。

「次は〜新大阪〜」

「行くか。」

横山くんに続いて新大阪の駅に出る。

この駅がいつか懐かしいって思えるくらい、東京で頑張れたらいいな。

改札を通り過ぎる頃には不安やらの葛藤も薄れ、東京行きを純粋に楽しみに思える位まで、気持ちを整理出来た。

あとは、皆にこの事を伝えるだけ。

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