-Prolog-
"やばい、迷ってしまった"
今日は親友のえみと山登りに来たんだけど
途中ではぐれてしまった
"あ、電話しよ"
スマホを開く
時計はもう7時を示していた
"圏外"
ですよねえ
繋がるわけないよなあこんな山の中
"うぅ、寒くなってきた"
暗いし寒いし誰もいないし
すっごい怖いんだけど.
不安になって、もう一度スマホを開く
19:21の文字の後ろには
サングラスをかけた男性が笑っている写真
そう、私の大好きな"龍友くん"だ
龍友くんをみると少し心が落ち着いた
"よし、エミ探してみるか"
エミを探すためうっすら闇の中を
慎重に進んでいく
"グキッ"
"いったっ"
慎重に歩いていたつもりなのに
足をくじいてしまった
暗闇の中ひとりぼっち
もう、歩けそうにもない
私は不安で押しつぶされそうだった
"どうしよう"
私は腕の中のスマホをもう一度握りしめた
"龍友くんっ"
半泣きになりながら無意識にそう呟いていた
"ポタッ"
涙が液晶画面を濡らす
"えっ?"
黒かった液晶画面に龍友くんが浮かび上がった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。