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第4話

2度目のさようなら
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2018/09/25 10:36
私は、暗闇を歩き、光の方へと進んだ。
光の先には。
天国でもなく地獄でもない、私が87年間思い愛し続けてきた人が、、、。
私の目からは、彼が亡くなってからずっと我慢していた涙が溢れ出した。
そして、彼の存在を確かめるため、彼を抱き締めた。
「あぁ、凪君だ。凪君だ、、」
彼は、亡くなった17歳のままだが、年で身長が縮んだ私より大きくて、17歳のあの頃の思い出が脳内を巡る。
「凪君、ずっと会いたかった。ずっと泣きたかった。ずっと一緒に居たかった」
私の顔は、涙でぐちゃぐちゃなのに、凪君はあの頃のように綺麗な眼差しをしていた。
「桜子、ごめん。苦しい思いをさせて本当にごめん。俺、あのデートの日、早く桜子に会いたくて、急いでて、信号無視したんだ。死ぬほど桜子に会いたかったんだ」
凪君は、死んだら会えなくのにねって頭を掻きながら笑った。
「笑い事じゃないよ」
「あはは、ごめんね。でも、嬉しい」
「何が?」
そう聞くと、凪君は私の手を握りこう言った。
「桜子が自ら命を捨てなくて」
「え?」
「もし俺と桜子の立場が逆だったら、俺は自殺をしていたと思う。だって、愛しいんだもん。愛しくて、愛しくて。桜子もそうだった?」
私は黙って頷いた。
「もし桜子が自殺をしていたら、もっと早く会えたのかも知れないけど、俺は87年待ってて良かったと思う。
だって、桜子。お前ずっと死にたかっただろ?何度も自分の胸を刺そうとしただろ?なのに何で死ななかった?」
涙がボタボタ零れる。
「そ、それは、、それは、」
「愛していたからだろ?」
凪君は私に顔を近づける。
私は、ぶるぶる震える唇を噛み、やがて噛む力が弱めた。
「ずっと見ていたよ。桜子が毎日泣くの我慢してるところとか、毎日俺の写真を見ながら、愛してるって言ってるところとか」
私は、手で涙を拭う。
目の下がじんじんと痛んだ。。
「桜子、ずっと俺の事愛してくれて、ありがとな」
凪君は私を抱き締めた。
「凪君、私、デートしたい。凪君とデートがしたい」
そう言うと凪君の腕がほどけ、さっきとは違う表情になった。
「..ごめん、それはまだ出来ないんだ」
何で?と私は顔で訴えると、凪君は急に泣き出した。
「俺は...次の新しい人生を歩まないといけない。だから、これから行く来世では..桜子との記憶は...消えているんだ..」
凪君は泣き崩れる。
「ごめん..ごめん...。もうすぐいかないといけないんだ...」
私は、大声で泣く凪君の頬を自分の手で包み込んだ。
「大丈夫。待つよ..待ってるよ。だから凪君も待ってて。私たちがデートできる日を。毎日、愛してるって言い合える日を」
また、涙が溢れ出す。
「今度こそは...二人で苦しもうよ。一人はもう辛いよ..」
そう言うと、凪君は立ち上がり、涙を拭いた。
「あぁ、そうだな。いつになるか分からないけど、待ってる。そしてそういう日が来るのを祈ってる」
次は凪君が私の頬を包んだ。
「約束しよう、次俺たちが出会う時、俺は必ず桜子に恋をすると」
凪君はそう言って、私に口づけをした。
「愛してる」
「私も..愛してる」
凪君は、私の涙を拭き、笑顔で消えていなくなった。

もう、心配しなくて大丈夫だよ。
だって、貴方を愛しているから。
それに、
「2度目のさようならは約束付きだもの」



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