それから僕は一生懸命練習した。
手には何枚もの絆創膏が貼られている。
この傷さえもすこし愛おしいのが不思議だ…
2月14日当日。
目の前にはあの時のチョコケーキが結構な高クオリティに再現されている。
気がする…w
僕はこういうサプライズ的なのは慣れてないから、今から緊張して胸が痛い
作ったケーキを大事にラップをかけ、冷蔵庫に入れる。
くれたケーキのお返しってだけで、そこまで特別ではないのに
今日まで毎日のように練習していた
ドキッ…
まただ…また………あいつの事考えただけで…
出発しようと思ってた時間より、10分以上経っていた。
髪や服は随分早めから準備していた。
カメラ枠とはいえ、顔は映らないから髪型はキメなくていいんだけど、
配信終わったあとのことを考えると…
無意識に格好付けてしまったw
軽い荷物を持ち、家を後にする。
タッタッタッと音を立てながら必死に向かう。
-数十分後-
ガチャッ
久しぶりにこんなに走ったものだから、息と汗が同時にバッと溢れ出す。
みんなはそう言うけど、
遅刻って言っても普段は5分くらいのしかしてないし…
まあ遅刻自体悪いことだけど!!!
るぅとくんが真顔でじーっと僕を見つめてくる。
なんだよ、何か変なものでも付いてるかな…
想像してた返答よりも遥かにおかしな返答だったから少し笑ってしまった。
なんだこいつ
どうしよ…なんて言えば…
ジェルくんナイス!!!
ほっ…
何とかごまかせた…。
びっくりした。
るぅとくんは僕の方をまじまじと見ながら問いかけてきた。
ほんとなんなん?
ちゃんと答えなかったことに少し疑問を抱いているのか、あいつはずっと僕の方を見てる。
あんま見んなよ…
ギクッ
さとみくんはたまに全てを見透かしてるかのように当てられるからこわい…
今……できる事…
さとみくんの言う通りだよな…
僕が抱いてる気持ちが…なんなのか…
今日、ちゃんと確かめよう。
ちゃんとお兄さんなんだよな、さとみくん。
ありがとう。
だけどあんまり暴れないでくれ。
20分後…
今から作るクッキーには思い出なんてないけど、
この後のことが何故か楽しみになってきて、すごいワクワクしてきた。
〖配信を始める 〗
(挨拶等は省略します💦)
張り切って板チョコを切ろうと包丁を握る。
すーっと引いて…
さとじぇるが僕を見て笑ってくる
ちぇっ
さとみくんは本当に絆創膏を貼ってくれた。
僕も、さとみ君みたいにかっこいいお兄さんになれるかな…
かっこいいって思ってもらえるかな…
ズキッ
莉犬くんとるぅとくんの手が重なる。
ダメだ…集中しなきゃ…
………………
んああもう!!!
気になって仕方がない!!!!
体が自然とるぅとくんの場所まで動いていた。
あーあ。また素っ気なくなっちゃった…
なんでこんな態度とっちゃうんだろ僕…
嫌われて…ないよね…
続く。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。