次に目を覚ました(?)というか、意識が戻った時、私は知らない場所にいた。
でも、学校だった。知らない学校。
私は何故か授業中の教室の廊下の前にいた。
「行きたくないなぁ」
(え?誰もいない.....声はどこから?)
女の子の声がどこからが聞こえてきた。
「私が入った瞬間全員が振り向く。好奇心の目に晒される。」
「ほっといて欲しい」
また、意識と関係なしに足が動き、手を挙げてとドアをあげる。
(こんなに手を挙げたらリスカが見える。おろさなきゃ)
(え?動かない?)
私の意思とは裏腹に手でドアを開けた。
ハッとした。
(リスカの傷が、ない?)
私の声では無い。
(え?どういうこと?)
(中村さんって、だれ?
......あ、入れ替わる人?)
私が考えている最中にも目線が動き、時計を見る。
13時10分。
5時間目の開始後少しだろう。
背負っていたリュックをおろし、教科書を出す。
ノートも出して、ペンをとる。
ふっと、またそこで意識が途切れた。
チャイムがなった。
どうやら授業後の休み時間らしい。
(あーちゃん?だれ?)
私は、ゆーと呼ばれているらしい。
口角が上がる。
マスク越しだとはいえ、私(仮)は満面の笑みだ。
【ゆーというのは、中村柚さんのあだ名です】
【あーちゃんと言うのは、中村柚さんの親友の白石藍音さんのことです】
らにぃさんの声。
案内人ってこういうこと?
また意識が途切れていたらしい。
知らない人達と、ご飯を食べていた。
お茶碗は黒い有田焼、みたいなやつ。
それと......お箸は、木のそのままの色のヤツか。
(この人たち、だれ?ここはどこ?)
【あなたの正面は中村柚さんのお母さん、中村若葉さん。あなたの右側は、中村柚さんのお父さん、中村楓人さん。】
らにぃさんの声がする。
(なるほど。つまり、私と中村さんのお父さんの間に中村さんのお母さんが座ってるんだ。)
やっとわかった。
家族構成はこんな感じなんだ。
入れ替わるのは不安しかないが、らにぃさんもついていて、ここまで押えていたら大丈夫な気がする。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!