私の頭の中はずっと修学旅行費用の事でいっぱいだ。
それ以外は今は考えられそうにない。
(というか、「あなたちゃんが居ないと生きていけないもん」とか言うなら契約解除しないで欲しいんだけど。)
それが少しでも本当に思ってくれているなら、だが。
(って、都合よく解釈しすぎか。天野くんにとってはからかってるだけだし、冗談みたいなもんなんだろうし。)
何を企んでいるのか、全く読めない彼を前にして、私は心の内でため息をついた。
(明日は補習授業みたいなのが入ってた筈だし…多分、終わった後も…)
明日の自分を想像すると、放課後にまたあの公園のベンチに座っている自分の姿が見えた。
(明日?学校近くのコンビニ?…な、なんで???)
(結局、天野くんはいつ私にコンビニで待てって言ってるんだろう?)
公園のベンチに座る明日の自分の姿が消されてしまった今、
私には天野くんの脳内に浮かんでいる企みが全く掴めそうにない。
諸に疑問の表情を顕にする私に、天野くんは白い歯を覗かせて笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。