第42話

#塩見さんと契約の話 ⑦
981
2020/05/16 17:00
私の頭の中はずっと修学旅行費用の事でいっぱいだ。
それ以外は今は考えられそうにない。



(というか、「あなたちゃんが居ないと生きていけないもん」とか言うなら契約解除しないで欲しいんだけど。)
天野 カエデ
あなたちゃんー、
あなた

天野 カエデ
おーい、
それが少しでも本当に思ってくれているなら、だが。


(って、都合よく解釈しすぎか。天野くんにとってはからかってるだけだし、冗談みたいなもんなんだろうし。)
天野 カエデ
聞いてる?
あなた

え、あ、はい。何ですか?

天野 カエデ
ぼんやりし過ぎじゃない?
あなた

少し考え事をしてました。

天野 カエデ
ふーん…明日もさ、遅くなるの?
あなた

何でそんな事聞くんですか?

天野 カエデ
何でも。(ニコッ)
何を企んでいるのか、全く読めない彼を前にして、私は心の内でため息をついた。


(明日は補習授業みたいなのが入ってた筈だし…多分、終わった後も…)


明日の自分を想像すると、放課後にまたあの公園のベンチに座っている自分の姿が見えた。
あなた

…まぁ、遅くなるんじゃないですかね。

天野 カエデ
ならさ、明日学校近くのコンビニで待ってて。
あなた


(明日?学校近くのコンビニ?…な、なんで???)
あなた

そ、それは朝ってことですか?

天野 カエデ
朝?ははっ、何で?
あなた

いや、朝食の事で何かあるのかな、って。

天野 カエデ
いやいや、朝じゃないよ。
明日も作ってくれるんでしょ?
あなた

そのつもりですけど。
…なら、昼ご飯の事ですか?

天野 カエデ
え、お昼はお弁当じゃないの?
明日は作らない感じ?
あなた

いや、作るつもりでした。

天野 カエデ
だよね?
良かったー、あなたちゃん作の愛妻弁当が明日は食べられないかと思った。
あなた

いや、私は天野くんの奥さんじゃないんですけど。

天野 カエデ
だから、これはノリだからマジレスやめてって。

(結局、天野くんはいつ私にコンビニで待てって言ってるんだろう?)
天野 カエデ
あなたちゃん、鈍っ。
残るは1つしかないじゃん?
あなた

…授業と授業の合間?

天野 カエデ
いやいや、そんな訳がないでしょ。
あなたちゃんの時間軸細すぎない?
てか、1日の流れ考えるとさー…
あなた

…夕方?

天野 カエデ
そう、夕方。
放課後だよ、放課後。
あなた

放課後?
どうして放課後なんですか?

公園のベンチに座る明日の自分の姿が消されてしまった今、

私には天野くんの脳内に浮かんでいる企みが全く掴めそうにない。



諸に疑問の表情を顕にする私に、天野くんは白い歯を覗かせて笑った。

天野 カエデ
さぁ、どうしてでしょう?

プリ小説オーディオドラマ