第60話

天野 カエデside
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2021/02/04 17:00
町田 タカユキ
同棲してるって言ってたじゃないですか。
天野 カエデ
あー、かなり前に別れましたよ。
町田 タカユキ
…どちらから別れ話を?
天野 カエデ
俺からです(ニコッ)。
町田 タカユキ
はぁ…やっぱり。理由は?
天野 カエデ
理由…理由…んー、あんまり無いです。
強いて言うなら、飽きたことと干渉のし過ぎがウザかった事ぐらいですかねー。
町田 タカユキ
高校の頃から変わってない理由ですね。
天野 カエデ
そうでしたっけ?
あー、でも、確かに毎回言ってる気がしなくもないです。

俺が笑いながら話を続けるにつれて、彼は徐々に表情を曇らせた。
天野 カエデ
だとしても、面白くない相手と居てもつまんなくないですか?時間の無駄になりますし。
町田 タカユキ
天野 カエデ
恋人って関係になったからと言って、何が変わるのかって感じなんですよね〜。
いくら深い関係でも干渉してくるのはウザったいだけですから。
町田 タカユキ
毎度、貴方の彼女になる人が可哀想です。

(可哀想、ねぇ…確かにそーかもだけど。)




『天野くんの彼女さんは大変ですね。少し冷たくされ続ける付き合いをするなんて。』



ふと先日の彼女の言葉が蘇る。

あぁ、そうだった。

彼女にも言われたんだっけ。
天野 カエデ
あはっ、それこの前も言われましたー。
町田 タカユキ
元カノにですか?
天野 カエデ
いえいえ。面白い人に。
町田 タカユキ
『面白い人』?

彼はこちらを見てから少し首を傾げたようだったが、直ぐに視線を元に戻した。


俺達は人工芝生が敷かれたグラウンドの横を歩いていく。

グラウンドの形に沿って立てられたフェンス越しに、クラブ活動に勤しむ生徒達の姿が幾つも見える。
町田 タカユキ
珍しいですね。
天野 カエデ
何がですか?
町田 タカユキ
天野先生にそんな事を言うなんて。

彼の差す『そんな事』とは、多分彼の言う『可哀想』という言葉のことだろう。
天野 カエデ
まぁ、はっきり言われた訳じゃないけど、そういう意味合いだったんでしょうね。
町田 タカユキ
…その『面白い人』が次の恋人候補ですか。
天野 カエデ
?!

彼の突然の言葉に思わず吹き出す。
天野 カエデ
ふはっ、無い無い!無いですよ、それは!!!あはは!

そんな事があれば、普通に捕まる。

というか、彼女にはそんな気がこれっぽっちもない。

まぁ、だから、これまでやって来れたんだろうけど。





彼が言った通り、前の恋人(元 塩対応ガール)とは数ヶ月の間同棲していた。

別に大した喧嘩もなく、2人を繋ぐ気持ちの波も大きく揺れることは無かった。

間違いなく、周りからどう見ても順風満帆だったと思う。



が、別れた理由には俺の個人的な『飽きた』とか『干渉がウザい』の他に、

実はもう一つ理由があったりする。


結果、その理由が俺から元カノに別れを切り出す展開へと繋げる決定打となってしまった。


(…)



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