第20話

#とんでもない嘘の話 ⑥
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2020/02/14 10:00
あなた

その事なら、この前の口裏合わせてもらったのがあるし、送り迎えして貰ってる設定ぐらいなら今度は私が口裏合わせるけど。

桧原 カズオミ
うん。それは有難いけど。
あなた

けど?

桧原 カズオミ
なんか家変わったって言ってたから、前みたいな静かな感じなら放置しようと思ったけど、
桧原は私の後ろに広がる光景を見て、目だけで苦しそうな表情を浮かべた。
桧原 カズオミ
ここまで都会に近い所なら、流石にお前だけじゃ心配になる。行き帰りは一緒にする。
あなた

え!

桧原 カズオミ
何?
あなた

そ、それって…家まで来るって事ですかね?

(家はやばい!桧原には住み込みでバイトするなんて言ってないし、

ましてや男の人の家だって分かったら大分まずい!)
桧原 カズオミ
何?困る事でもあんの?
あなた

いや、別に。無いけど。

桧原 カズオミ
あなた

桧原 カズオミ
嫌なら良い。でも、電車に乗るまでは最低でも送る。朝はここの駅の改札で待ち合わせ。良い?
あなた

うん、分かった。

桧原 カズオミ
ん。なら、行こう。お前について行くと完璧にロスタイムになるから、俺について来て。
あなた

ロスタイム…言い返したいけど言い返せない。

桧原 カズオミ
だって、本当の事だろ。小学校の時のフィールドワークだって班で迷子だったし。
お前、方向音痴じゃん。
あなた

そうでしたね。

桧原とは恐ろしい程の腐れ縁で、

幼稚園の2年間、小学校の6年間、中学校の3年間、そして高校1年間、

合計12年間を桧原と同クラスで過ごしている。
桧原 カズオミ
ほら、行くぞ。ちゃんとついてこいよ。
あなた

分かってるって。

桧原は歩道脇に経っているガードレールからもたれるのを止めると、

私の前をすたすたと歩き出した。


(うわぁ…また身長伸びてる…)



ほぼ毎日顔を合わす義務教育から一転、
高校に入って文理選択も違うし、そうなると授業も違う。

自然と話す機会も少なくなっていった。


唯一、2人が言葉を交わす時間といえば、

学校やバイトで遅くなった時の行き帰りぐらいだ。



だからか、余計に桧原の成長が分かりやすくなった気がする。
あなた

今年も同じクラスだと思う?

桧原 カズオミ
いや、流石に違うだろ。
あなた

それ去年も言ってたよ。

桧原 カズオミ
うるせ。
あなた

今年は何賭ける?

桧原 カズオミ
今年もやんのかよ。…じゃ、お好きなアイス1本奢る。
あなた

乗った。

たわいのない会話をしながら、遅れないように歩幅を合わせる。


(桧原には凄い迷惑かけてるなぁ…なんせ、嘘までついてもらっちゃったし…)




『大丈夫だって。炊事洗濯は1人でこなせるし、桧原も同じ高校で、一人暮らしするって言ってたから。』




(今思い返すととんでもない嘘ついてるなぁ、私!おい!!)
あなた

ははは…

桧原 カズオミ
え、何、急に。
あなた

いや、凄い嘘をついちゃってるし…桧原にとんでもないご迷惑をお掛けしてるな、と思いまして…

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