(どーせ、新しいバイトの面接か引越し先の相談でしょ。)
(ほーら、また分かりやすい顔。ババ抜きとか絶対出来ないタイプじゃん。)
(俺と距離は取りたがる癖に、こういう言葉はサラッと言えるんだ?)
俺に冷たくする女の子は今まで沢山居たし、
実際、過去直近の恋人は元は彼女に似たような塩対応ガールだった。
ただ、隣のクラスの担任と知っても尚、ここまで塩っけのある対応をされるとは。
クックックッと笑いながら口にした言葉は、彼女には不本意だったのか静かに否定された。
(あー、ほんと、)
彼女の言葉を遮り、
俺は躊躇いもなく現実の話を彼女に突きつける。
軽く下唇を噛んで下を向く彼女を見たのを最後、俺はスッと滑らかに自然に視線を外した。
(大体、ここまで大きなリスク犯してまで俺の家政婦に執着したい理由って何なのかも知らないしね。…もしや、俺のこと好き…とかは態度的に流石に無いか。)
彼女には悪いけど、
単純明快に言って、
俺には関係のないことなんだわ。
(ははっ、俺ってば性格悪。)
彼女との契約解除まで、あと数日。
俺の暇潰しにさえなってくれれば良い。
せいぜい俺を退屈させないでよ?
──── 塩見 あなた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!