第52話

#天野くんと放課後の話 ⑩
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2020/10/24 17:00





天野 カエデ
ねぇーねぇー、あなたちゃん。

『バタンッ』

私が先に車の助手席に座った後、運転席のドアが開いて天野くんが乗り込む。
あなた


にっこりと笑みを浮かべ、声色も優しかったのに…




一気に声のトーンだけが下がった。
天野 カエデ
ホント、何やってんの?(ニコッ)
あなた

…、、、(汗)"

天野 カエデ
あんな所彷徨くとか馬鹿なの?あの辺り一帯、ホテル街って知らなかった?
あなた

天野 カエデ
俺、この辺り危ないって言ったよね?
だから1人で帰さなかったし、車の中で待っててって指示したよね?

何も言い返せない。

身体の向きだけ若干天野くんの方へ向け、視線を運転席のメーターなどに送っていると、
あなた

天野 カエデ
ねぇ、

今度は天野くんが私の顔を覗き込む。
天野 カエデ
聞いてる?(ニコッ)
あなた

………すみません。(ボソッ)

天野 カエデ
声、小さくない?
あなた

…すみません、でした。

天野 カエデ
…はぁ……、もう良いよ。

緩やかにエンジンがかかると、すぐにスーパー隣の駐車場を出た。



天野くんは私が絡まれていたところを助けた後、私が車に乗り込むまで全く話をしなかった。

ずっと黙ったまま、でも貼り付けた笑顔だけは健在だった。
天野 カエデ
俺、車に戻った時にあなたちゃんが居ないのが分かって超焦ったんだからね?
携帯に電話掛けても、車の中で鳴ってるだけだしさぁ、
あなた

天野 カエデ
駐車場とは反対方向に向かってフラフラしてるし。
あなた

天野 カエデ
てかさぁ、前にも携帯使えなくなって、ドジしてマンションから閉め出されてたよね。
記憶に新しい気がするんですけど、その辺はどうなんですかね?

(痛い所ついてきたな…いや、天野くんの事だから言ってくるだろうな、とは思ってたけど!)


私を煽るように嫌味を言ってくる訳だが、悔しくもそれは本当の事だし、しかも彼には迷惑を掛けた上に助けて貰った。


文句なんぞ言えるはずがない。

言えるはずはないのだが…


(でもさぁ、でもさぁ…)


赤信号で止まる度に私の方に顔を向けては言い続ける彼に対し、私はバレないようにフロントガラス先の景色に目を細めた。


(さっき、「もういいよ」って言ってたじゃん!!!)
天野 カエデ
ま、あなたちゃんに何も無かったから良いや。でも、ちょーっとは俺の事も考えて欲しかったなぁ…
あなた


(…確かにそうだよね。爽やかに現れて、平気な顔して助けてくれたけど、本当は息切らしてまで走って探してくれてたかもだし…)

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