第29話

#dramaticでbadendな話 ⑤
1,131
2020/03/10 12:50
(…は?)


私は一瞬、素直にきょとんとしてしまう。
あなた

え、だって、今朝天野くんが言ってたじゃないですか、

天野 カエデ
何を?
あなた

『同居ってエロく聞こえるの俺だけ?』って。

天野 カエデ
だからって、同棲って言葉使うの?
なんか可笑しくない?
あなた

いや、誰だって『エロく聞こえる』なんて言われたら、その言葉は避けますよ。

天野 カエデ
で、" 同棲 " と。
あなた

はい。

天野君の今の表情は、私を馬鹿にしてるように見えた。

当惑の眉をひそめつつも、いつもの様にクスクスと笑っている。



天野 カエデ
もしかして、同棲と同居の違い、分かってない感じ?
あなた

は?



『パシッ』



天野くんにいきなり右手首を掴まれた。
あなた

え、何ですか?
離して貰えます?

天野 カエデ
同居はただ家をシェアしてる感覚だと思うけど、
あなた

聞いてる、天野くん?




『グイッ………………ドサッ』





突然引き込まれた手首。

足の感覚がないまま天野くんの下敷きになる。
あなた

っぁ…

声にならない声が口から零れていく。

私を押し倒した天野くんの影が私に重なって、


自ら直した天野くんの髪からふわっと香水のいい匂いがした。



『ドッドッドッドッ…』


心臓が煩い、身体が熱い。

天野くんに掴まれた腕から伝染するように熱を帯びていく。
天野 カエデ
こういう事する男女が一緒に住むっていう意味だよ。
あなた

…っ、


(痛い…)
天野 カエデ
エプロン着てる辺り、なんかお嫁さん感があって唆るって感じ。
あなた

…っ、、、


(痛い、痛い…)
天野 カエデ
…って、抵抗しないの?
もしかして、俺の事好きになっちゃった?
あなた

…な…わけ、

天野 カエデ
あなた

んなわけないでしょうがぁあっ!

『ビクッ』

視界のど真ん中を独占する天野くんを見上げながら叫ぶと、

天野くんは少し驚いて目を丸くした。
あなた

足痛いんだって!!
早く退いてよ!!
こっちは足痺れてんのっ!!!!

天野 カエデ
あなた

痛いってば!
聞いてんの?!

天野 カエデ
え、あー…
あなた

何、昼ご飯と一緒に炒め殺されたいわけ?!

天野 カエデ
うわぁ、それは痛そうだから勘弁。
天野くんは「ははは」と笑い声を漏らしてから、

暫くそのままじっと私を見つめていた。


(頭ぶつけたし、背中痛いし、足痺れてるし…最悪、)
あなた

天野 カエデ
あなた

… 何ですか、天野くん。
早く退いてください。

天野 カエデ
…いや、あなたちゃん、こんな事されてドキドキしたりしないの?
あなた

は?

天野 カエデ
こういうの、女の子ってドキドキして喜ぶものじゃない?
あなた

いや、天野くんがいつも言う女の子って何処の子ですか。

プリ小説オーディオドラマ