天野くんと暮らし始めて、早くも数日が過ぎた。
少女漫画やドラマの様な展開があってもいいものの、一切起こる気配はなく、淡々と毎日が過ぎていく。
朝は天野くんを起こし、朝食を作る。
天野くんは完食すると自分の部屋に戻り、
着替えてはすぐに車のキーを持って、家を出て行く。
その後、私は天野くんに見つからないうちに春休み中の課題を済ませ、仕事である家事をこなしていく。
そう、こんな淡くもなければ酸いも無い時間の流れに身を任せている状態だ。
『ギクッ』
『ギクゥッッ』
『ガタンッ』
どれも当てはまるように思い出され、つい手元の調理器具を床に落としてしまう。
天野くんはれっきとした男の人だ。
そして、乱暴はされなかったけれど、初対面の女性に平気で壁ドンをする。
私とは真逆の世界の人間。
私はすぐさま落とした調理器具を拾うと、私の背の方にあるカウンター席に振り向く。
私の携帯に『通話中』というボタンと『秋晴 フミカ』の字が、画面に浮かんだり消えたりしている。
《ふふふふ〜ん♪》と、ご機嫌な鼻歌が携帯のスピーカーから聞こえる。
(やっぱり。)
案の定、フミカの仕事を手伝うというものだった。
別に構いはしなかったが、フミカの仕事は私には正直合っていなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。