中身の無いカフェオレのカップをコンビニのゴミ箱に捨てると、
私はスクールバッグを肩に掛けて急いで出て行く。
いつも車のキーを片手に出勤する姿を見ているので分かってはいたが…
(こんなに派手な車だとは思わなかった!!!)
このコンビニは学校から離れていたとしても、
当然ここを利用しようと来る事は勿論、登下校として近くを通る生徒や先生も居るだろう。
『バタンッ』
車の助手席が自動で少し開いたのを確認してから、
周りを警戒しながらスルリと車内に身を滑り込ませる。
私の隣に座っている天野くんは片手を口元に当てながら笑う。
車内に2人っきり。
こんな状況を見られでもしたら…写真に撮られでもすれば一巻の終わりだ。
なのに、天野くんときたら信じられない。
こんなに派手な赤い車を堂々とコンビニの前に停めて、更にはサングラスも何も掛けていない。
疚しい関係に私と天野くんがある訳ではないとはいえ、
流石にこの状況の危険を省みて欲しい。
天野くんはハンドルを握り直すと、ゆっくりアクセルを踏んだ。
景色がゆっくりと後ろへと流れる。
(結局、天野くんは私を何処に連れていく気なんだろう?)
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天野くんと私はそれから特に会話をするでもなく、静かな時間が車内では流れた。
気まずくも無ければ、退屈にも思わない不思議な空気感。
(何故かは分からないけど、居づらくないんだよなぁ…)
膝の上に乗せたスクールバッグの持ち手を握りながら、周囲に警戒する。
信号待ちで車が止まっている際、
何度か他の車と車の隙間から下校中の生徒が見えては心臓が止まりそうになった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。