『顔に出過ぎ。』
『顔に出てるから。』
(うわぁ…最近似た様な事を言われたばっかりだ…)
フミカはその瞬間、ニシシッと笑う。
いたずらっ子のように幼く笑うフミカを見て、
私は適わないなぁと困って思わず口元を緩めた。
フミカは「ん〜、」と少し唸って、
再度いちごオレのストローに口をつけた。
放送部が流すラジオのBGMが音量ミスでちょっと五月蝿い。
振り返ると、クラスの誰かが教室上部に設置されているスピーカーの音量を弄っているのが視界に入った。
『ジュッ…』
パックジュースから口を離した独特な音が聞こえて、フミカへと視線を戻す。
フミカは何か考えてくれているのか、
私がフミカを見ているのに対し、フミカは教室の奥の天井辺りを見ているようだ。
フミカのストローの先に自然と目が行く。
ピンクのリップが白いストローに映えていた。
それはうるりとしていて、艶やかで、透けたリップの下から白いストローが見えている。
(い、色っぽく見えちゃうなぁ…)
こんな所に色っぽさを感じてる私は変わってるかもしれない。
でも、フミカが可愛くて、私なんかの隣にいるのが勿体無い事ぐらいは私がよく知っている。
時々、
こんなにも外も内も完成されたフミカが私の友達である事が夢なんじゃないか、
と思ってしまうのはフミカには内緒だ。
(可愛いも大人の色気ってやつも、フミカは上手に持ち合わせてるから凄いなぁ…)
フミカには尋常じゃない向上心があるから、美容にもお仕事にも並大抵じゃない努力も出来る。
そこも私がフミカの尊敬する所だ。
フミカはパックジュースを持った手の人差し指を教室のスピーカーに向ける。
私はスピーカーを確認するなり、すぐさまフミカに向き直った。
涙袋が浮き出るようにニマッと笑ったフミカは続けた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!