この会話の後、
天野くんはスーパーの袋をと共に私を車に乗せると、目的地へと颯爽と行ってしまった。
(何の用事だろう?繁華街の方面に向かって行っちゃったけど。)
雲行きが怪しい空を見上げながら、遠くの方で点滅し始めたネオンの看板を見つめる。
(今日の夕飯は何にしよう? 冷蔵庫に残っているものと今日買った分で考えると……)
天野くんが戻ってくるのを待つ私が夕飯のメニューを考え始めて、数十分後。
取り込んでいるのだろうか。
誰にでも予想だにしない事によって予定が伸びる事はある。
今日のコンビニでの待ち合わせで、それは私も改めて分かっていた。
(少し待ってから様子見に行く?)
『ガチャッ』
車のドアを開けると、周りをキョロキョロ見ながら足を地に下ろした。
多分、今の私は独りが物凄く不安で、気を張り続けるのが嫌なんだと思う。
だから、待てなかった。
スクールバッグを持って行こうかと考えたが、
教材も重いし、荷物になりそうなので置いていくことにした。
『バタンッ』
が、ドアと閉めた後で携帯がバッグの中にある事に気づき、
再度ドアを開けようとドアノブに手をかける。
『ガチャッ、』
『ガチャッ、ガチャッ、ガチャガチャッ、』
何度引いてもドアが開かない。
私の血の気がサァッと引いた気がした。
中に入れずに立ち往生。
この記憶は私の中ではまだ新しい。
マンションのエントランスにさえ入れずに、外でびしょ濡れのまま立ち往生。
あの日も雨模様の空だった記憶がある。
自動ロック式め…またもや私を虐めるか。
何の反応を見せないドアノブから手を離すと、深めのため息を一つ吐く。
後ろを振り返ると、天野くんが行った繁華街方面の通りが奥へと伸びていた。
今にも降り出しそうな雨雲と屋外の駐車場ではあまりにも相性が悪すぎる。
このまま車の傍で待つか、天野くんを探すか。
あまりいい選択ではない気はするが、今は後者の方が良いだろう。
私はネオンの看板が誘う方へと歩き出した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。