第12話

#雨の中の話 ⑤
1,262
2020/01/02 13:31





買い物は行けた。

迷いながらも、

地図アプリを頼りすぎて携帯の充電が無くなっても、

途中で土砂降りの雨に打たれても、

何とかマンションの前まで戻る事が出来た。



ただ…
あなた

鍵忘れた…

天野くんのマンションはエントランスに入るのも鍵が必要で、

勿論、家に入る時も鍵が必要だ。


でも、家の施錠をする時は鍵は要らず、ドアが閉まると自動でロックされる仕組みだった。


施錠をしなくても良い為、すっかり鍵を持って出るのを忘れていた。
あなた

寒いし…買った物は濡れてるし…

体を震わせながら、足元のズブ濡れスニーカーを見下ろす。


(誰かがエントランスのゲートに入る様子があったら、一緒に入れて貰おう。)



が、運悪く、誰も通る様子も無ければ、やって来る気配も無かった。


(嘘でしょ…)
あなた

寒、い…

エントランスのゲートの前で小さく座り込み、

身体を必死に温めようとする。


日はどんどん落ちていき、それに伴って春の夜特有の肌寒い空気が一面に漂い始める。


土砂降りの雨が止むのはまだ遠く、

さらに冷たい風が私の薄着を嘲笑うかのようにぶつかって来る。
あなた

寒いっ…

少し伸びた横髪からは雫が静かに零れ、一度地面に置いてしまった幾つかの買い物袋の上に落ちた。

袋の外側にも雨粒が大量に付いている。
あなた

天野くん…早く、

真っ暗になり、すっかり冷たくなった携帯画面を見て、

「はぁ」と大きな息を漏らす。
あなた

帰ってきて…





天野 カエデ
あれ、あなたちゃん?
あれからどれぐらい時間が経ったのだろうか。

私にはもう2時間は待ったかのように思える。
あなた

あ、天野くん…

天野くんはスラッとした長身が目立つズボンに、

真っ白なYシャツ、

そしてアーガイル柄のベストを着て、私の前に立っていた。

黒っぽいジャケットと襟元の赤いネクタイの結び目が緩くなっているのを最後に見て、私は驚いた。


(こ、こんなきっちりとした格好で大学行ってるんだ…)
天野 カエデ
どうしたの?こんな所で座り込んで。
あなた

え、あ、いや…その…鍵を部屋に置いて来ちゃって…閉め、出されて…(カタカタカタ)

天野 カエデ
うわ、可哀想。俺に連絡してくれれば良かったのに。
あなた

携帯の充電、使い切っちゃって…そもそも電話番号もメールも知ら、ないし…(カタカタ)

天野 カエデ
あれ、最初に来て貰った時に住所とか電話番号とか書いてなかったっけ?
あなた

あ、れは、家の固定機の電話番号でした…(カタカタカタ)

天野 カエデ
あーね、取り敢えず、中入ろうよ。あなたちゃん、凄い震えてるしさ。

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新年、

あけましておめでとうございます🎍🐭✨

さくらどろっぷ.です🌸


去年は沢山の人に私の作品を読んで頂き、

本当に有難う御座いました🙇🏻‍♀️💦

今年も私の果てしなく広がる独特な世界観を、

皆さんにお届け出来るよう、

塩見さんと天野くん、

そしてその仲間達の力を借りながら頑張りたいと思います🦋✨


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是非チェックして頂ければと思います🙋🏻‍♀️





さくらどろっぷ.

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