第24話

#とんでもない嘘の話 ⑩
1,147
2020/02/23 17:11


クラスメート
なぁ、担任遅くね?
クラスメート
やばい、バイトの時間が来ちゃうんだけど?!
クラスメート
誰か呼んで来いよー。
クラスメート
私、様子見てこようか?
始業式の魅力といえば、

なんと言っても早く終わるところだと思う。



長い始業式を乗り越え、宿題提出を済ませ、担任やクラスメートの自己紹介をすれば、

それで終わり。


(始業式って素晴らしい…! 早く帰って家事とか済ませないと…今日は天野くんがお昼頃に帰ってくるとか言ってたな…)




『あなたちゃん。悪いけど、俺の分のお昼ご飯も用意してくれない?今日は早く終わるから、一緒に食べようよ。』


『えっ!(…どうしよ、制服で鉢合わせとか本当に困るんだけど…)』


『ん?』


『いえ、何でも無いです。分かりました、待ってますね。』


『はーい。』




朝のやり取りを思い出した私は
あなた

はぁ…

と大きく息を漏らす。


(桧原には悪いけど、アイスは次の機会って事で。)





お母さんには修学旅行がある事も、
私がその費用の為に住み込みで新しいバイトを始めた事も知らない。



桧原には家が変わった事と新しくバイトを始めた事は伝えたが、

当然、住み込みだとか、ましてや大学生の男の人と住んでるなんて言ってない。



フミカもそう。
新しく住み込みでバイトを始めた事は伝えているが、

天野くんの事は何にも言っていない。
あなた

いやぁ…本当に何してるんだ、私。

年齢を偽ってまで住み込みでバイトを始めた訳だが、

相手は大学生の男の人な訳で。



互いにその気が無くても、

普通に危ういラインには立たされているし、

はたから見たら普通に男女の関係だと思われるだろう。


(クライアントが男だって分かった瞬間に断るべきだったかな、やっぱり。)



『バタバタバタッ』

教室の外から廊下を走る音が聞こえる。



(ま、今更引き返すつもりなんて無いけど。費用が貯まったら辞める…費用が貯まったら辞める…)

あなた

あ、携帯充電しておこう。

『ブーブーッ』

天野くんから貰った例の物を使い、

携帯画面に充電中の緑のランプが浮かび上がった時だった。


『ガラガラガラッ!』
いや、ごめんごめん!
君達の担任はちょっと用事があるみたいなので、代わりに俺がするね?
クラスメート
あっ、新任の格好良い人っ♡
うわ、嬉しっ。
可愛い子に言われると照れるんだけど、どうしてくれんの?
クラスメート
きゃーーっ。♡

(何だ、遅かっ…)


聞き覚えのある声に思わず、




天野くんの家かと思ってしまった。
じゃ、まず俺から自己紹介しまーす。
今年から隣のクラスの担任をする事になりました、

黒いスーツに、少し緩められたネクタイ。

オシャレなベストがボタンが開けられたジャケットから覗き見える。

サラサラのストレートヘアと、いつも外に出ていく時に付ける黒縁の眼鏡。



知っていた。

というか、今朝にしっかりと見た。
天野 カエデです。

授業で度々会える筈なのでよろし…く…

目が合った。




教壇の上の天野くんと目が、








合ってしまった。
あなた

天野 カエデ


さて、皆さん。


年齢詐称で異性の男の人の家に上がり込み、

バイトをしていた上に既にクライアントとの約束を破ってしまった私ですが、


それどころの問題ではなくなってしまいました。
あなた

天野 カエデ



新事実。






私、








隣のクラスの担任と同棲していたようです。




プリ小説オーディオドラマ