第69話

誰が為の傍らの話⑤
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2021/10/04 19:00



今にも千切れそうな細い糸の上にある様な関係だと、

怪しまれない関係の名前。





…駄目だ。

完全にアウトな単語しか出て来ない。




もし、この状況を切り抜けられなかったら………

社会的に確実に " 死 " あるのみ!!!



それはなんとしてでも阻止せねば…!


天野 カエデ
あなた




と、暫く黙りを決め込んでいた天野くんが、

私の後ろでボソリと呟く。


天野 カエデ
友達のお兄さん。
あなた

と、友達のお兄さんです!

へぇ、そうなんだ。
初めまして、お兄さん。僕は森下です。
あなたちゃんとは元同僚みたいなもので…
あなた

何言ってるんですか。上司ですよ。

天野 カエデ



隣で目をぱちくりさせるだけの天野くんに、私はため息を零すと、

森下さんが居る段まで降りていく。



手のひらを上に向けて、森下さんの前に持ってくると、

未だ理解出来てなさそうな彼に説明を始めた。



あなた

…こちら、森下さん。昔、アルバイトでとてもお世話になった上司の方です。

天野 カエデ
あなた

先日、友達から新しいバイトのお誘いを受けて、

天野 カエデ
あなた

そのお返事をしようと思って、今日は森下さんとここで待ち合わせてました。




瞬きだけを繰り返す天野くんに、

森下さんが笑みを見せながら話し掛けた。


モリシタ
あはは、確かにこんな怪しいビルに中高年のオジサンと一緒だったら心配するよね。ごめんね。
あなた

森下さんはオジサンじゃないですよ。
まだまだ若いです。

モリシタ
ありがとう、あなたちゃん。
モリシタ
因みにだけど…



森下さんは自分の口を指さして、

階段から私達をじっと見ている天野くんに問う。


モリシタ
僕の声とか、聞き覚えあったりする?
天野 カエデ
声?
モリシタ
うん。
あなた

………天野くんが大好きな声ですよ。
欠かさず聞いてたじゃないですか。

モリシタ
え、そなの?
あなた

はい。

天野 カエデ
声、声、声………まさかと思うけど、



じっくり考えてみれば、すぐに思い当たる節を見つけたのか、

天野くんの目がみるみる内に見開いていく。


天野 カエデ
あの、モリシタさんですか、?
あなた

はい、あの、モリシタさんです。

天野 カエデ
………は?!?!まじで?!
あなた

まじです。

モリシタ
新鮮な反応してくれるんだね、お兄さん。
凄く嬉しいよ。
モリシタ
それじゃもうひとつ。
彼女の事は知ってるのかい?
あなた

?!




森下さんの視線が私へと移される。



(まさか…)


あなた

い、いえ、まだ彼には教えてなくて、

モリシタ
え!!!!何で?!
あなた

いや、その、教える必要も無いかなとか思っちゃって

モリシタ
それは駄目でしょう?
あなたちゃんのこと心配して駆けつけてくれたのにぃ。

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