第22話

#とんでもない嘘の話 ⑧
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2020/02/19 21:15
あなた

はぁ…

私はため息をついてから答えた。
あなた

無いよ。フミカが思ってるようなのは無いですよ。

秋晴 フミカ
うっそ!もう付き合えばいいじゃん!それ、多分好きって気持ちが麻痺してるんだよ、一緒に居すぎて!
あなた

えぇ…無い無い。そもそも桧原が彼女居るかどうかも知らないし。その手の話は全くしないし。

秋晴 フミカ
いや、桧原の事狙ってる女子は腐る程居るからね?!今は桧原の彼女にしーちゃんが彼女っていう疑惑が浮上してるから、アプローチされてない訳で…
『ドンッ!』

『ガタンッ!』
秋晴 フミカ
そんな事してたら、あっという間に桧原取られちゃうんだからね?!後で泣きついて来ても知らないから!
あなた

フミカ、椅子…

秋晴 フミカ
あ、ごめん。
フミカが勢い余って立ち上がった表紙に、椅子は見事にひっくり返る。

フミカはえへへと笑いながら椅子を元に戻した。
秋晴 フミカ
うわぁ、何これ?!しーちゃん、こんなの持ってたっけ?!
あなた

ん?

フミカが私のバッグから顔を見せた物を指さしている。
あなた

あぁ、えっと、持ち充ってやつらしい。

秋晴 フミカ
やっぱり!結構良いやつだよ、これ!メーカーもすっごく良い所だし、この前テレビでも最新だってやってた!
あなた

そう…なんだ。

「ちょっと見せて!」と、

前の席に座ったフミカは私から例の持ち充を手に取ると、

暫く見てから聞いてきた。
秋晴 フミカ
え、もしかして、しーちゃんが買ったの?
あなた

ううん、貰った。

秋晴 フミカ
貰った?!
あなた

うん。

秋晴 フミカ
誰から?!
あなた

えっと…



『その二、他言無用。』



(全部…どれも言っちゃ駄目って言ってたよね…)
あなた

その、知り合いの人。

秋晴 フミカ
知り合いの人?
あなた

うん、知り合いの人。

フミカはじっと私の目を見る。

その目に引け目を感じて、ふいっと視線を逸らした。
秋晴 フミカ
知り合いの人と言えば、知り合いの人だけど…はっきり言うと、クライアントさんでしょ?
あなた

秋晴 フミカ
だって、しーちゃんは絶対に持ち充なんて買わないだろうし、
あなた

!!

秋晴 フミカ
ほらぁ、やっぱりぃ…
フミカは意地悪にニヤッと笑うと、私の手元に持ち充を返した。
秋晴 フミカ
てかさ、何で隠すの?
クライアントさんの事で私に後ろめたい事でもあるの??
あなた

あっ……いや、別に…特には。

秋晴 フミカ
じゃ、どうして?例えば、クライアントさんが暴力的というか、変な事してくるとか?迫って来るとか?
あなた

(汗)

秋晴 フミカ
いや、迫ってくるとか無いか… か、まさか主が犬…とか?!
あなた

秋晴 フミカ
それは冗談で…男の人だったりだとか??
あなた

(汗汗)

秋晴 フミカ
って、流石に男の人と同棲はやばいから無いか…
じんわりと冷や汗が出て来る。


(フ、フミカにバレるのは…なんか、色々まずそう…)


意識しないようにしていても、落ち着かないからか、

持ち充をバッグの中で触る手が止まらない。
クラスメート
おーい、そろそろ始業式始まるぞー。グラウンド集合だってさー。
クラスメート
うぃー。
クラスメート
行こー?
クラスメート
始業式ってだるいんだよなぁ…

(な、ナイスタイミング…!)
秋晴 フミカ
だってさ。始業式行くかぁ、しーちゃん!
あなた

うん。

秋晴 フミカ
愛しの桧原くんを見に行く為にっ。
あなた

だから、そんなんじゃないって。

秋晴 フミカ
はいはーい。
廊下から他クラスの生徒が教室に顔を出し、「急げよー。」と付け加えると、

ぞろぞろとクラスメート達が教室を出て行き始めた。


フミカは機嫌良さげに私の前を歩いて行く。





(フミカは鋭すぎるから怖い…心臓に悪い…)




くるんと髪先が緩くカールされた後ろ姿を見ていると、

フミカはすぐに振り返った。
秋晴 フミカ
どうしたの?
あなた

ううん、何でもない。

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